投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

心雨ーShinUー
【その他 恋愛小説】

心雨ーShinUーの最初へ 心雨ーShinUー 1 心雨ーShinUー 3 心雨ーShinUーの最後へ

心雨ーShinUー-2

ばらしてはいけない気がしたの。このことは、私を大きく左右する、そう感じたから。

人間になった私は、今まで話したかったたくさんのことをお話しした。貴大さんは、私が猫だったときのように同じ話をしてくれたし、前以上に親しくしてくれた。
彼とまた明日、の合図で別れると、私は猫に戻った。そして、なぜだかわからないけど、次の日になると人間の姿に変わっていた。

ここ最近はずっと晴れた日が続いた。暑いのに、毎日彼はここへ来てくれた。
「彼女さんとは会わないんですか?」
ついに私は聞いてしまった。すると、彼はすごく真面目な顔をして話し始めた。

「彼女はね、理学療法士になりたいんだ。そのためにはすごい学力が必要で、すごい勉強をしたんだ。めでたく目標の大学に受かったんだけど、そこはここからじゃ通えなくてさ。俺はここで大学きめたから、遠距離だね。だから会えない」
彼はふっと空をみた。あのときの胸が詰まる表情、私は息が詰まる。
「彼女が行ってしまうとき、雨がふってた。彼女は、俺とは別れなくちゃって思ってたみたいだけど、俺は違ったんだ。」
彼はふわっと笑うと、きらきらしたまなざしで前をみつめた。
「だって好きあってんだよ?少々会えなくったって、一生をともにしたい相手だ、4年や6年待てるだろ?結婚ってゆうごほうびまでのほんの一瞬の我慢だよ」
私の胸は痛みだした。こんなに素敵な顔をみてときめく気持ちと、こんなに素敵な顔をさせられる彼女さんに嫉妬している気持ちで、心のなかには嵐さえも吹き荒れた。
空が急に曇りだした。夕立の前兆のように雷が声をあげる。
「じゃぁ、また明日」

そう、それは私の心のように。

また朝がきた。今日はいつもと違って空は憂鬱な面持ち。私の心を写し出すかのようね。
叶わないって、わかってる。あなたに負担だってかけたくないの。

でも。でもねーーー…

「またいた!君も毎日来るんだねぇ」
私はにっこり笑った。
「親友ですから」
貴大さんは、そうだねって笑った。やっぱり私も笑った。

あなたの笑顔はお日様。わたしの心は雨模様。

いつものようにたわいのない話をいっぱいした。いつものように笑って、彼はいつものように席を立つ。いつもと違うのは私だけ。

んじゃあ、また明日ーーー彼は遠ざかる。
ポツッ…雨、だ。
あぁ、お別れなのね、神様。今日でおしまいなんだね。
「名前、海ってゆーんだよ!!」
あなたは、え?とふりむく。
ザーッと雨は強くなる。雨が私をさらう前に、この気持ち、伝えたい。
「猫でも、みんな一緒って言ってくれたよね…」
雨が声をかき消す。彼は私をじっと見ている。
「大好きだよ!」
びっくりするよね。困るよね。でも、知っててほしいよ。こんなにもあなたが好きだってこと。
あなたは、少し悲しそうな顔をして、でも最後に笑って、ありがとう、と言って去っていった。

後悔しないわ。だって、こんなに好きになれたから。だから、せめて、私のこと忘れないで…

明くる朝、彼は冷たくなった白い猫を見つけると、大きな樹の下に彼女を埋めてやった。
ある男性が彼の横を通りすぎた。ラジオを身に付けており、キャスターの声は彼にも聞こえてきた。
『梅雨明けは、もう少し先になるようです。ーーー…』

彼は空を見上げて、そっと瞳を閉じた。


心雨ーShinUーの最初へ 心雨ーShinUー 1 心雨ーShinUー 3 心雨ーShinUーの最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前