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心雨ーShinUー
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心雨ーShinUー-1

今日も朝がきた。あいかわらずの雨でわたしはうんざり。おかげでごはんも探しに行けなくてお腹すいたよ。
ズキっ…

そうだった。昨日隣町の子と喧嘩して右足ケガしちゃったんだっけ…。もぉー、雨なんかやんじゃえぇー!!
そう叫んでも、みゃーってしかヒトには聞こえないんだろうけど。
今日は公園のゴミ箱、みてみよっかなぁ。そう思ってしかたなく雨に濡れながら歩いてくと、ベンチに男のヒトが座っているのが見えた。ベンチの上には樹がしげっていて、雨を通さないみたい。
「にゃぁー」
私はフッと彼をみた。またいつものおちょくってくるくだんない人間かと思ったら。
彼の眼はすっごくおおらかで、優しい目をしてたから。ついつい彼の手に擦り寄ってしまった。
「どうしたー?お前えらい腹ぺったんこだなぁ」
まぁ、ここ三日何にも食べてないからね。
「これ食え」
そういって、パンを差し出した。イィにおいだぁ、食べていいの…?

そう思って見上げたの。そしたら、今まで出会った誰よりも素敵な目をして、いいよ、と彼は言った。私は心から感謝してパンを完食した。
「すげぇいきおいだったなぁー。お前、ここら辺に住んでるのか?」
そうだよ、と私は答えた。
「じゃあ明日また持ってきてやるよ」
ありがとう!!と言っても、やっぱり“にゃー”としか聞こえないのかぁ…。そう思うと悲しい。
「雨、やみそうにないなぁ。お前、雨好きか?」
首だけ振るってゆうのはムリだから、体の水を払うように、ぶるるっと身震いをした。
「そっかぁー、俺は好きなんだけどね。」
あ、今、遠い目したね。何か、切ないような、懐かしいような目。
とくん、と胸がなった。すごくどきどきする。こんな気持ちは初めて…。
「お前の目の色ってすごい深い青なんだな」
私の顔をのぞきこむ。思わず目をそらしてしまう。
「海みたいだなぁ。」
ほんとに?この目は、いろんな人間に忌み嫌われ、軽蔑されてきたのに。
「今日からお前は“海”な!」
そういうと、私の頭をくしゃくしゃっとなでた。
目が細くなって、男らしい、という言葉がぴったりの顔がふんわりと笑う。私の頭をなでた手は、大きくて暖かい。

人間になりたい。

私は、このとき初めてそう思ったんだ。

今まで出会った人間と言ったら、私の目をみては“気持ち悪い”だとか言って手をしっしと振るやつらとか、“変な色”って石ころ投げてきたり、にゃぁと私をよんではあざ笑うやつらばっかだった。わたしにとって、彼は太陽だった。

それからは、毎日があめだったけど、彼と私は毎日会って、彼はいろんな話をしてくれたの。名前は貴大(たかひろ)っていうこととか、お医者さんになりたいってこと、昨日の晩御飯はまずかったこととか。あとは。
結婚前提の彼女さんがいること。

「なぁ、猫でも好きとかわかるか?」
彼は彼女の話をしたあといきなりそうきりだした。
「やっぱ恋とか愛情にヒトもネコも関係ないよな。好きとか嫌いとかは皆一緒だよ」
わたしは顔をあげた。「だから海は俺んとこくるんだよな」
カノジョがいる。…それでも私の気持ちは変わらなかった。むしろ募るばかりだった。人間になりたい。人間になりたい。そう願っては溜め息をついた。

ざぁっと雨が強くなった。彼とは、さっきわかれたから一人きり。私の涙と雨のしずくがとけて水溜まりになる。
神様、お願い、少しでいいの。後悔しないから。
水溜まりは、雨に打たれて水面は揺れる。不思議な光を反射させながら…。

気付けば、朝になっていた。今日は晴れてる。でも貴大さんは喜ばないのかなぁ。そう思いながら、昨日の水溜まりをみた。

ーこれ、私なの?ー
映ったのは、端正な顔立ちの少女だった。ロングヘアで、瞳は深い青。
「私、人間になれたの…?」
一人つぶやく。
「声もでる…!貴大さんとお話しできるんだ!!」
そう思って、ベンチに腰かける。白いワンピースに夏の青い空がまぶしい。
しばらくすると、貴大さんはやってきた。きょろきょろしてる。猫だった私を、探してるのかしら。
「白い猫なら、私知ってますよ」
話しかけたい気持ちが前に出て、こんなこと言っちゃった。
「ほんとに?君も知ってるのかぁ」
あいつは俺の親友なんだ、と微笑んだ。
「俺、貴大。君の名前は?」
そう言われて、私は“海”とは言わなかった。
「貴子です」
彼はあっはっは、と大笑いして、まぁいいけど、と言った。


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