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月の不在。
【エッセイ/詩 恋愛小説】

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僕だけの月。-1

真夜中、
雨上がりの空。

薄くかかる雲に、
黄金の、月。

塵が洗われた暗闇に、

あまりにも
美しく輝くから


立ち止まり、
見上げたら、


一歩も進めなくなった。


火を点けた、
タバコの紫煙が、
たじろぎもせず
揺るぎなく、
月に向かう。


僕の気持ちも、
迷いなく、
君に向かっていければ、
いいのに。


タバコを灰皿に押しつけて僕は、携帯をひらく。


急に、君に
伝えたくなった。


こんなにも、綺麗な世界。


コール音、三回。
寝呆けた、君の声。

『もしもし?』

『起こしてごめんな。』

でも、君に知らせたかったんだ。
美しすぎるこの世界を。
今、この、瞬間に。



いつも、
待たせてばかりでごめん。


いつも、
フラフラしてて、ごめん。


君は、いつだって
《其処》に居てくれてる。

僕を、ちゃんと
見守っていてくれてる。


つきなみな台詞だけど。

あの《月》みたいだよ。



君を悲しませたら、
あの月は、また
雨雲に隠れて、
たくさんの涙、
流すに違いない。


ねぇ。
そばに行くよ。
ねぇ。
もう、迷わないよ。


見つけたんだ。
僕だけの月を。


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