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H.S.D
【学園物 恋愛小説】

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H.S.D*last*-2

「いっぱい迷惑かけたよね。オレ、すげぇ傷付けたよね…本当にごめん」
もう一度軽く頭を下げる。
「みんなにちゃんと謝るのってこれが初めてなのに、みんなはオレをここに連れてきてくれたよね。嬉しかった!…ありがと」
矢上は「本当にありがとう」と何度も言った。
「ありがとう、ありがとう」と、まるで一人一人に言っているかのように繰り返した。
「文化祭、すごく楽しかった!オレは大成功だと思うけど、みんなはどうかな?」
あちこちから
「当たり前だろ」
「楽しかった!」
「大成功だよ」
というような声が聞こえてくる。
そんなこと言われたらあたしも嬉しくなってくるじゃん。
だって、あたしは『みんなが笑って成功したと言えるような文化祭にしたい』と思っていた。実行委員になってからずっとそう思っていた。
このみんなの反応は、あたしの目標が達成されたとみていいと思うのだけど。
「そうか、良かった!」
満足気に矢上の目が細くなった。
「じゃあ文化祭の成功に…」
矢上はコップを自分の顔ほどまで持っていった。
あたしも自分のコップをしっかりと握り締める。そして…


『乾杯っっ!!』


たくさんの声の後、カチーンというガラスが軽くぶつかり合う乾いた音が次々と鳴った。
あたしも「乾杯!」と言いながらコップを差し出して文化祭の成功を喜んだ。
そしていざ飲もうとしたその時
「あ、ちょっと!それあたしのなんだけど」
好美があたしのコップをすっと取り上げた。
「いやいや、違…」
「たく、勘弁してよね」
「…あ」
好美はあたしの話を完璧に無視し、酎ハイを一気飲みした。
なんてやつだ!確実にあれはあたしのだ。たぶん、あそこに置かれた手付かずの空のコップが好美のだと思う。
「勘弁してほしいのはこっちだっての…」
一人でブツブツ言いながらあたしはそれを持って、酎ハイを作っていた樋口の脇に座った。
「あたしにも」
「オッケー、あっ!」
一瞬にしてあたしの制服がびしょ濡れになった。樋口があたしにお酒を渡す時、お互いの手が滑ってしまってお酒の入ったコップを落としてしまったのだ。
「わりぃ、天宮!」
そう言って樋口は手を合わせ申し訳なさそうに顔をしかめた。
「大丈夫大丈夫!気にしないで。洗ってくる」
あたしはヒラヒラと手を振り洗面所へ向かった。
これが仕掛けられていたことも知らずに…。


制服を洗って戻ってくると、なんと半分以上のクラスメイトが倒れていた。
事件!?と思い一瞬たじろいだがすぐにただの酔っ払い集団だということに気付き、あたしは人を踏まないように爪先で歩いていった。
「みんなもう潰れたの?」
あたしは座る場所がなくなって立ったまま、樋口と肩を組みながら飲んでいる好美に話かけた。
「そうなの〜っ!みんな弱いの〜っ!」
好美が頬を膨らませる。ふとお酒に目をやるともう缶ビールが2、3本しか残っていなかった。
「でもだいぶ減ってるじゃん」
樋口がぐっと親指を突き出した。
「ほぼ俺の胃袋の中よ。つぅか、天宮意外に洗うの時間掛かったんだな、ごめんな〜」
眉をしかめる樋口にあたしはまた手を振った。
「ほんと大丈夫だから。お酒まだあるね」
「うん」
二人同時に頷く。


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