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【思い出よりも…】
【女性向け 官能小説】

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【思い出よりも…終編】-3

ー駅前ー

少し遅れてカルナバルに着いた。忙しい時刻を過ぎているためか客は3人しかおらず、そのうち2人は若い恋人同士のようだ。

私は奥のテーブルに座って雑誌を読んでいる男に近寄ると、声をかける。

「沢田…さんですか?」

男は上目で私を見ると、座るよう促した。

「昼間は失礼しました。改めて、沢田一喜と申します」

沢田は私に挨拶すると、名刺を渡しながら、

「私の事務所がすぐソバですから、そちらで話を聞いてもらえますか」

私は沢田に連れられて、雑居ビルの一角にある彼の事務所に入る。
小じんまりとした事務所のフロアに据え付けてある古びたソファに腰かけ、私は沢田の話を聞いた。

「伊吹さん。単刀直入に言わせてもらいますが、二宮慶子と別れてもらえませんか?」

沢田のぶしつけな提案に私は面喰らった。と、同時に怒りを覚えた。

「あたなは何の権限があって、私にそんな話をするんです?まして初対面…」

沢田は右手を前に出して、私の言葉を遮ると、

「失礼は十分承知してます。だが、あなたは私の提案を受けないと非常にマズい立場に追い込まれる事になりますよ」

(なるほど、そういう事か)

「加奈枝……ですね」

沢田は肯定ともとれる肩をすくめるジェスチャーを見せると、

「普通、クライアントの素性は明かしてはいけないのですがね」

そう前置きすると、沢田は語りだした。

「この話は大手興信所から私のもとにオファーがありました。まあ、下請けですね。内容はあなたの身辺調査。特に女性関係を徹底的に調べろというのがクライアントからの要望でした」

(なるほど、裁判に備えての物証集めか)

私は加奈枝に対して怒りがこみ上げてきた。が、ここで不思議に思った。

(なぜ沢田は物証を掴んでいながら私にそれを教えるんだ?)

私はその事を沢田にぶつけた。

「伊吹さん。あなたがその辺の女を転がしているのなら、私はこんな話はしません。あなたが、どうなろうが知った事じゃない」

「沢田さん。慶子は、二宮慶子とあなたは、どんな関係なんです?」

私の問いに沢田は苦い顔をして答える。

「二宮慶子は私の姉なんです…」

「なんだって!?」

沢田はジャケットの内ポケットから、革のカード・ケースを取り出し免許証を抜くと私に渡した。


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