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台風バンザイ
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台風バンザイ-3

その日の深夜25時―――妹と父さんは寝静まってしまい、起きているのは俺一人だった。
俺はリビングでNHKの台風情報をずっと見続けていた。窓からは相変わらず風の立てる音がうるさいくらい聞こえる。
夜食のために買ってきていたカップラーメンを食い、コーラを飲みながら俺は台風が来る前夜の雰囲気を満喫していた。
今のところ順調に接近してきている。明日にはきっと大嵐になって学校が臨時休校になるだろう。まさにこれが九月にしか味わえない楽しみだぜ。
延々と台風を伝え続けるアナウンサーの声を聞きながら、強風でカタカタ揺れている窓の音を聞いていると、体がなんだかゾクゾクしてくる。
これだ。これこそがまさに台風のワクワクって奴だ・・・。
それにしてもなんだか眠くなってきた。
そういえば今日は学校から帰って昼寝してない。少し張り切りすぎたようだな。
体がぽかぽかと暖かくなってきた。
台風情報の声が耳から遠ざかってきた。
眠気で頭がぼーっとしてきた。まぶたがずしりと重く、すぐにくっついてしまう。
ううむ、意識が薄くなってきた。しかし一分でもこの緊張感を味わっていたい。
一分でも・・・一分・・・・・・。



「。。。ん?」
テレビはいつの間にか消えていた。俺の体にはなぜか毛布がかけられていた。
台所を見ると、食事を作っている妹の姿が・・・。
「しまった・・・」
俺は迫りくる睡魔に勝てず、ソファーの上で寝てしまっていたのだ。
うーん、と伸びをしながらソファーからを立ち上がると、妹がリビングにやってきた。制服に着替えてすっかり学校へ行く準備万端のご様子。
「おはよう兄さん、朝ごはんできてるよ。こんなところでで寝ると風邪引くよ?」
「あ、ああ。毛布をどうも」
と俺はだるそうに食卓につく。妹はなにやら機嫌がいいらしく、ご機嫌な鼻歌を歌いながら台所に向かった。
「兄さん昨日テレビつけっぱなしだったよ。だらしないなぁ」
 俺にトーストの皿を渡しながら妹が言った。
「ああ、わりぃわりぃってそうだ、台風は!? 台風はどうなった?」
「テレビつけたらわかると思う」
と妹にリモコンを渡されたあわててTVをつけてみる。
台風はというと・・・
奇跡的に俺の住んでいる地域からそれて、海のほうに流れていったと、アナウンサーは明るい口調で伝えた。
俺はあわててカーテンを開けて、外を見てみる。
するとそこには、カラッとした台風一過の天晴れな天気。
雲ひとつない・・・。
「休みにならなくて残念でした、今日も学校頑張って♪」
「そんな、バカな。こんなはずじゃ」
ロマンから絶望に変わった一瞬だ。こうしてまた俺の日常がやってくるのか・・・。
「兄さん、早く準備しないと遅刻しちゃうよ」
テレビの前に突っ立って呆然としている俺の背に、妹の声がむなしくひびいたのだった。
 
                               
<幕>


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