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台風バンザイ
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台風バンザイ-1

時期は九月の中旬。
高校生である俺にとってはとても欝になる時期である。
なぜなら夏休みという羽を伸ばせる巨大休暇が終わり、また学校へ通い続ける毎日が始まってしまうからである。まったく五月病と同じように九月病というのも作ってほしいくらいである。
そんな九月でも毎年恒例であるワクワク行事が一つある。
台風だ。
この時期になると台風が頻繁に発生し、他の月よりもはるかに高い確率で、俺の住んでいる地域に来襲する。そうなると窓の外は大嵐となり、すさまじい光景になり、大雨洪水警報が発令される。その結果学校は休校となるのだ。
こんなおいしいイベントは九月にしかないぜ。
そして今、数年に一度の大型台風が俺の地域まで上陸する直前まで来ているのだ。
俺はリビングに行き、テレビのニュースをつけてみる。アナウンサーが少し高ぶった声でニュースを読み上げている。
『ただいま情報が入りました。中心の気圧950ヘクトパスカル。津波の恐れがあるため・・・』
950か・・・。なかなかの大物だ。ちなみに台風は中心の気圧が低ければ低いほど、勢力が強いのだ。かって東海地方を襲った伝説的な台風、伊勢湾台風の中心気圧は930ヘクトパスカルだったと言われる。
カーテンをあけ、外を覗いてみる。
 窓を閉めたままでも、風が不穏な音を立てている。きっと台風がもうそこまで来ていることを告げているのだろう。
まさしく世紀末の世界に行ったような気分である。もうまもなく地球は滅亡する。そんな中、なすすべもなく立ち尽くす俺。一体これからどうするべきか。
それともこれは宇宙人による襲撃なのか? 
はたまたノストラダムスの大予言がいまごろ的中したのか?
そんなことを考えるだけでとてもワクワクした気分に浸れるのだ。
 窓の外から聞こえる風の音は大きくなり、近くに見える街路樹も激しく揺れ出した。今にも風に吹きちぎられそうだ。この風は一日後には大嵐へと進化を遂げるだろう。きっとそのうちに雨が降る。そして、俺の最寄り駅の近くに流れている川も氾濫して、最終的には決壊をおこして大洪水になるかもしれない。
事態が大きければ大きくなることを考えるほど俺の心のどこかにある期待感は増していく。
「そうだ!」
俺は急いで部屋に戻り、財布を引き出しの中から取り出した。
なぜかコンビニに行ってみたくなったのだ。
 玄関のドアを開けると、びゅうっとすさまじい風が家の中に入り込んできた。
俺をさっさとドアとすばやく閉めるとコンビニへと向かった。
外に出たとたんに俺はものすごい風の圧力に押し付けられた。
近くに立っている木々がガサガサと音を立てている。
空のビニール袋が宙を舞っていた。このままどこまでも飛んでいきそうだ。
帰宅途中の通行人もぼちぼち見かけられた。強い風にあおられて実に歩きにくそうだ。
学校帰りの女子高生がミニスカートを抑えながら歩いている。パンツが見えそうだ。おぉこれも台風の役得って奴か。
そんなことを考えているうちに通りの向こう側にコンビニが見えてきた。
強風によって体全体のコントロールも失われ、コンビニにいくのも一苦労だった。なぜここまでしてコンビニに行くのかおれ自身もよくわからないが台風のときでなければできない体験だ。 
 やっとの思いでコンビニに着き、ほっと一息。強風から開放されて、なんだか体が自由になった気分だ。
コンビニ店内には缶コーヒー、インスタント食品、ペットボトル飲料とさまざまなものが並んでいる。
こんな天候だったから客は俺一人だった。こんな頭のおかしい俺のためにわざわざ店員がレジで待ってくれてる。コンビニ店員も大変だな。


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