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特進クラスの期末考査 『淫らな実験をレポートせよ』
【学園物 官能小説】

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特進クラスの期末考査 『淫らな実験をレポートせよ』act.5-8

旧校舎一階の西端の保健室。隣りには進路指導室と職員室が建ち並ぶ。来客用玄関もある、いわば学校の"顔"の階だ。いつも(特に授業中は)静寂が総てを支配し、出して良いはずの声でさえ皆小声になっていた。

「どうした。瀬田、まだ具合が悪いのか?」
ゴロゴロとキャスター付きの椅子を引きずりながら、保健室の隣りの進路指導室から大河内が顔を出した。
大河内とは瀬田の属する理系において、化学の教鞭を執っている27歳の独身で、非常に適当な(これは瀬田の見解だが)うさん臭い男である。

「………別に」
ムスッとした様子で瀬田が答える。
倒れて起きたとは言え、寝て起きた最初に見たい顔では無かった。つまり瀬田はあまり大河内を好んでいないらしい。
「今日は保健医の津島(ツシマ)が休みなんだ。で、わりかし暇な俺が津島の代役を勤めている。薬品に関してはエキスパートだからな、俺は」
煙草を口に咥えたままの大河内は、ニタニタとお決まりの笑みを浮かべている。瀬田はただ黙って"外出中"のプレートを睨んだ。
鷲尾に運ばれた後、瀬田を看てくれたのは大河内だった様だ。
「悪かったなぁ、白石じゃなくて」
大河内が独り言の様に、誰に話しかける事無く語る。
「保健医の代役は普段白石が勤めていたんだがな。一身上の都合で退職した様だな。正式な退職は来月だが、有給休暇をフルに使って今日から居ないんだってよ」
ふぅ、と紫煙を吐く。大河内が視線を移すと、鈍色に光る瀬田の瞳にぶつかった。いつの間にか瀬田が睨む標的は、大河内へと変わっていた。
そんな真剣な対峙も五秒程度だったであろうか。緊張の糸が切れた……つまり、我慢しきれずに吹き出したのは、やはり大河内からである。

「くくくっ、分かり易いガキだな」

その一言で、瀬田の短気部分がプツンと音を立てて切れた。

(……糞がッ)

この鬱憤を晴らそうと、瀬田は無言で保健室のドアを蹴り上げた。





「意外と短気なんだな」
大河内が本日何本目か定かでは無い煙草を咥え、ギィッと椅子を鳴らした。
蹴り上げたドアは静寂に支配されていた廊下を、端から端へと稲妻の様に音を響かせた。
勿論、その音に驚いた教師が職員室から顔を出し、大河内と瀬田を確認すると苦々しい顔で「まだ授業中ですよ」と嫌味を言った。
飄々とした大河内は教師達から、彼の吸う煙草の様に煙たがられているらしい。

そんな事もあり、廊下で話すのも難ありだと考えた結果、彼の住家である化学準備室へと場所を移す事になった。
ちなみに保健医代行は、不運かな先ほど顔を出した教師に任せることも忘れずに。

不本意ながら、との意識がありありと伝わる様子で、瀬田は出された丸椅子に腰を下ろした。
時計を見上げても、50分授業はまだまだ終わりそうにない。
溜め息を吐きながら三畳ほどの部屋を見渡すが、書棚に囲まれたこの部屋は、圧迫された様な息苦しさを感じる。まるで大河内の様だ、と部屋と部屋の主を見比べた。


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