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麻薬
【女性向け 官能小説】

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麻薬 anotherscene-1

高原沙希と俺、森下大輔が「正式」に付き合いだして、2年。
何度も派手な喧嘩をし、別れる別れないの話をし、そしてそのたびに抱き合って解決してきた。

今度ばかりは、沙希がおかしい。

いっさい、俺と話をしようとしないのだ。


「お先に失礼します」
7時過ぎ。
まだ営業の連中は、残業に追われている時間だ。
別チームの沙希が席を立った。
「お疲れさーん」
「早いな、デートか?」
「やだ、蔵元さんってば。そんな相手いませんよ」
適当に相手をしながら、退社しようとしている。
「ちょっと、煙草吸ってくる」
分煙化が進んでいるオフィスを出、沙希を捕まえた。

「おい、待てよ」
「まだ会社だけど。放して、帰りたいの」
沙希は、掴まれた手を振りほどこうとする。・・・俺の目も見ないまま。
「お前、最近なんだよ。おかしいぜ」
「・・・ほっといてよ」
投げやりだ。
何も怒らせるようなことはしていないし、もちろん浮気なんかしていない。
「セフレ」で始まった俺たちだからこそ、そんなことはしたくないのだ。
「俺たちさ、もう2年付き合ってんだぜ。なんかあったのかよ。それくらい聞いてもいいだろ、彼氏なんだから」
沙希の手が、少し震えたのがわかった。
「あとで、うちに来て。そしたら・・・話す」

振り返った沙希の顔は、どこか青ざめて見えた。



沙希は、この春から実家を出て一人暮らしを始めた。
うちのほうがベッドがでかいから、泊まるときは俺の家。
くつろぐときは、沙希の家、と暗黙の了解が出来ていた。
会社の沿線沿いのマンションに着いたときは、もう10時を回ってしまっていた。
クレーム処理に追われていたのだ。
オートロックの解除も慣れていた。暗証番号を押し、部屋へ向かった。
何の話をされるんだろう。
まさか、別れ話じゃねーだろうな。
「他に好きな人が出来た」なんて言われたら・・・俺、どうしよう。

チャイムを押すと、すぐドアが開いた。
「おかえり。遅かったね」
髪が少し濡れていた。もう風呂に入ったのだろう。
「ああ、ごめん。・・・入っていい?」
「どうぞ」
パジャマ代わりにしている、ハーフパンツから伸びた白い脚が、先に立って歩く。
もう、3週間くらい抱いてない。
・・・仲直りエッチ、できっかな。
そんなよこしまなことを考えながら、部屋に入った。

「ビールでいい?ちょっと御飯も作ってるけど、食べる?」
「うん、食う」
スーツをハンガーにかけてくれながら、そんなことを聞く沙希を見ると、まるで嫁さんだな、と思ってしまった。
実際、俺んちの家事も沙希が積極的にしてくれている。
料理も上手いし、家事の手際もいい。それに身体も合う。
これ以上いい嫁さん候補もいないよな。
でも、俺もまだ26。沙希は25。
嫁って話も、まだ早いか。


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