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秘密
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秘密〜和馬の祈り〜-7

7 秘密
〜和馬の祈り〜
26才:夏


「楸先生っ」

数人の生徒に呼び止められた。

せーのっ
「ごきげんようっ」

きゃーっ。
ぱたぱたと去っていった。

「・・・・」
中学生は元気だなぁ、とか考えつつ、再び歩き出す。


「相変わらず、おモテになること」
ぽんぽん、と肩を叩かれた。
「・・水野先生」
「『ごきげんよう』」
ー真顔で言うなよ。

「あんまり近付かないでくれますか」
肩の上の手を退ける。
「あら、何その態度。冷たいわねぇ」
「あなたのせいで、余計な噂が立ちましたんで」
「私のせいじゃないわよ?」
失礼な。と腕を前で組む。


水野 加代子(ミズノカヨコ)27
中等部の数学教師。
桜蘭の卒業生らしい、しとやかな女性ー・・・では、ない。
最近、何かと俺にちょっかいを出してくる。


「あら、妃さん」
「水野先生、と・・楸先生」
妃が止まった。
「今帰り?」
「いえ、部活へ行こうかと・・・」
「そう、気を付けてね」
「はい。・・ごきげんよう」
頭を下げて去っていった。

ー目を合わせてもくれない。・・いや、俺が合わせようとしていないのかもしれないな。


「彼女、良い子よね」
うふふっと笑い、
「お勧めだわ」
「は!?」
意味深な言葉を残して消えた。

「何なんだ・・・」


「かぁーずまっ」
「うあ゛っ」
かばっと後ろから襲われた。
「しっ、翔!!何すんだ!」
「いぇい♪」

ー何なんだコイツは。26にもなって・・・。
「近くによったんでねぇ。ついでに」
「はいはい」
「うそうそ。・・心配だったから」
「まだ、あの約束守ってんだ・・・」
「当然!!皐との約束は、どこまででも守りマス。ー・・っつー事で、薬のみやがれや」
おら、と渡された。
「はいはい」


「そうそう、妹にお前の事言ったら、『何で紹介してくれませんでしたの!?』って怒られた。ナゼ?」
具体的に仕草まで真似された。
「妹?」
ー誰だっけ?

キリサカ・・・

「桐榮美狭子か!!」
「へっ?」
翔が、驚いたように俺を見る。
「お前、気付いてなかったわけ?可愛そうに、美狭」
「貴様の妹だったのか・・・!」

 気付いてみると、妙に納得できる。

「似てるな」
「そうか?アイツは母親に似てると思うが」
「性格」
「・・・・」
「黙んなよ」


「菖ちゃん」
「え?」
「知らないか?美狭子の親友なんだが・・似てるな」
「・・・・・」
誰に、とは聞かない。
ー俺もそう思ったから・・・。

「好きなんだろ?」
「ーっ!?」
驚いて翔を見る。

ー何故

「図星、だな。昔から黙る癖があるから、すぐ分かる」


「ー・・分からないんだ」
「分からない?」
「この気持が、恋なのかどうか」

 皐への想いに同調しているだけなのかもしれない。

「皐を忘れられない?」
「勿論。忘れるつもりもないよ」

忘れないと誓った。絶対に忘れない。

「けれど、」
何なのだろう。

「・・・怖い」

ーあぁ、そうだ。
 怖いんだ。

確実に俺の寿命が近くなってきている。
それは、自分が望んだ結末。・・・だった筈、なのに。

「和馬、」

ぽん、と頭の上に手を置かれた。

「皐は、俺にお前を支えてと言った。だから、言わせて貰うぞ」
「・・・・あぁ」
すう、と大きく息を吸う。
「よし。まずは、お前の気持をハッキリさせろ。病気のことは、その後考える。ったく、俺が結婚して子供も出来たというのに。お前もさっさと身を固めろ。『エイズ』だから無理でしたー。とか言うなよ?その気になれば、どうだって出来るだろ?奥さんも、・・・子供だって。っと、話が変わっちまった。・・・・とりあえず、菖ちゃんをどうにかしろ。あの子は、お前が好きだぞ」
「・・・根拠は」
「勘。俺の勘だ。当たるぞー。ってオイ、笑うなコラ」


ーありがとう。やっぱりお前は、俺の大切な親友だ。


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