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こころ…へ
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こころ…へ-2

五年前ー
俺達は夫婦だった。3歳になったばかりの娘がいた‘こころ’が…
こころは生まれつき心臓が弱く、喘息まで持ち合わせていた。
その日は久々の波乗りの約束が入ってて…

「邦君…今日家にいて、こころの様子がおかしいの」
「ええ〜…いつものだろ〜、今日は久々なのぉ〜悪いけでも〜行ってくるよん」
「ね〜何かおかしいのよ、お願いっ、ね」

いつものことだと思った…
いや…浮かれてて、見えていなかっただけだ…

「じゃあ、せめて携帯つながるようにしといてね」
「あいよ〜ん」
「邦君っお願いね!!ね!!」

あんなに必死に訴える清香の言いつけも聞かず、携帯にも出ず、俺がこころにあったのは…こころが息をひきとってから半日も経っていた…
「だから言ったのに…だから…だからあんなに言ったのに!!あんなに言ったのにーー!!」
清香の叫びが俺を真っ二つに切り裂いた…


俺、メニュー表をそっと清香に手渡した。
「?…何?」
「…いいから見てみ」
清香、メニュー表にゆっくりと目を落とす。
「これ…」
「うん…お前とこころの好きだった食い物…俺の思いつく限りのな…」
「うん…」
「他に何かあったら加えるから…言って」
「うん…」
清香、しばらくメニュー表を眺めるとポロポロと涙を流し始めた。
「うおぃ…ちょっ…どした?」
俺、慌ててカウンターから飛び出し、清香の元へ駆けていった。
「ごめんね…」
「いや…」
清香の隣に腰を下ろした俺…
改めて思った。
ーこいつ…こんな小さかったか?こんなに弱々しかったか?…
俺、清香の頭をそっと撫でた。
「離婚の理由…」
「ん?」
「離婚の理由ね、流産だけじゃないの…」
「……」
「忘れられなくて…」
「…何を?」
「こころの事…」
「何言ってんの、忘れる必要ないだろがよ」
「…だから…こういうことよ…」
清香はメニュー表を俺の前に突きつける。
「?…」
「だから…こんな風にこころの事を一緒に思い出せるのは、邦君だけだってこと…家族でいたいのは、邦君だけだってこと…」
ー……
「清香…」
「ごめんなさい…こんな、調子いいよね…邦君を傷付けて、他の人と幸せになろうとした私が…」
どくん…どくん…
俺の手がまた震えだす。
ー…いいのか…?俺で…いいのか?受け入れてしまって…また傷付けてしまわないか…?…俺の存在が辛くさせないか?…
「いや…そう思うのはズルいな…」
「え?」
「いや…俺もちゃんぶつけるぞ」
俺、気合いを入れるために立ち上がる。
「何?」
ーよ…よ〜し!!
俺、両手をグッと握りしめた。


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