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『ご主人様の気持ち』
【その他 官能小説】

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『ご主人様の気持ち』〜最終話〜-3

「やめて下さいっ」
俺は初めて気が付いた。
自分の行動を冷静に分析すれば、すぐに理解できたことを、ようやく知った。

右手に巻かれた包帯。
傷が完治したにも関わらず、未だに隠し続けている自分。
男と二人でいるのを見て、焦って行動に移した自分。

所有欲。

独占欲。

そんなものだと思っていた感情が今、改めて違うのだと知る。
だが俺は冷静さを失っていた。
俺の問いかけに美央は『話をしていた』と答えたからだ。

「ぃや、やめてっ」
美央を押さえ、いきり立つモノをぶち込む。

俺は嫉妬していた。
頭に血が上っていた。
ただ会話をしただけの男にあの笑顔。
憎くてたまらなかった。

美央の気持ちが分かれば、こんな感情にならなかったのかもしれない。
確かなものがあれば、こんなにも不安に駆られることも無かった。
だが美央は確実に離れていく。
こうして耐えているのは、柔順さゆえに抱く罪悪感からだ。
傷が治れば役目を終え去っていく。
その焦りから、美央を自分のものだと主張するように、俺は腰を使った。

「うぅっ・・・ぁ!」
悶え苦しむ美央の声。
苦痛に歪む顔も悲痛な声も、届いていなかった。

怒り。

憎しみ。

苛立ち。

俺はいつしか、それら全てを自分に向けていた。
美央を好きだという気持ちを、こんな形でしか表現できない自分を呪った。

だが-----。
「あっ・・・ぁ」
行為を終えると後悔の念が俺を襲った。

「何故こんなことを・・・」
すすり泣き、手で顔を覆う美央に胸が痛んだ。

自分の身勝手な行動で美央を傷つけ、泣かせてしまった。
その戸惑いは予想以上に大きかった。

泣き続ける美央の前で、俺は自分の中で溢れ出る何かを感じた。
何かしたい。
誰かのためではなく美央のために、何かしてやりたい。
そんな想いに捕らわれた。

初めての感情。
だが、どうしたらいいのか分からなかった。

呆然としながら俺は頭をめぐらせた。
今まで芽生えたことのない感情のために、必死で頭を回転させた。

そして考えて考えたあげく、
「美央・・・」
小さく震える身体を抱き起こし、
「すまなかった」
強く抱きしめた。
「許してくれ」
心から謝罪をした。
「俺は・・・」
全てを語ることを決心した。

ゆっくりと言葉を選び、話を始める。

今までのこと。これからのこと。
自分はどうしたいのか。どう思っているのか。
時間をかけ、話し、
『傍にいて欲しい』
『ずっと一緒にいたい』

今まで誰にも口にした事のない言葉を並べると、美央は驚き、また泣いた。
そして
『私もです。ご主人様』と、涙目の笑顔が返ってきたのは、その数分後だった。


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