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琴線
【大人 恋愛小説】

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琴線-5

[分かったよ、会うよ。セット・アップはそっちでやってくれ]

森は安堵の笑顔を浮かべる。一巳はそれを見て、一瞬、引き込まれそうな自分を覚えた。が、一言釘を射すのを忘れなかった。

[但し、何の確約も出来ないぜ。お互いフィーリングが有るからな]

そう言うと残りのビールを一気に呑み干した。

[たっだいま〜っと]

夕方、現場での仕事を終え一巳は事務所に戻って来た。周りから"お疲れさ〜ん"と声が返ってくる。彼のデスクは上司である課長のとなりだ。彼が席に着くなり課長が、

[さっき総務課の森さんから電話があったよ。君が出張中と伝えたら、戻り次第連絡をくれと言っていたよ]

[あ、はい。分かりました]

一巳はパソコンを立ち上げながら、受話器を取ると森の内線番号を押した。2回コールした後、聞き馴れたハスキーな声が一巳の耳に響いた。

[彼女と会ってもらう日程が決まったの。来週の金曜日]

[来週の金曜日ってえらく急だな。23日だろ]

[それで、どこか良いお店を紹介して欲しいんだけど…]

[お店ねぇ……]

一巳は考えた。給料前なのでたいして余裕も無いし…

[焼き鳥屋で良いか?]

[エ〜ッ、もうちょっと雰囲気のある場所は?]

[給料前で余裕がないんだよ]

[ワリカンにすれば良いじゃない]
[バ〜カ!女性とメシ喰って金出せなんて言えるかよ]

一巳がそう言うと受話器の向こうが、しばし沈黙。どうしようかと考えているようだ。

ようやく森から答えが聞こえた。

[じゃあ来週金曜日の夕方6時に本社のロビーで…]

[いや、その日オレは出張なんだ。だから6時過ぎに地下鉄の5番ゲートに居てくれ。その前に携帯に連絡入れるよ]

[…5番ゲートね…分かった]

[それから、当然アンタも来るんだろう?]

[私はアナタ達を会わせたら帰るわよ]

[オイオイ、オレに初対面の女性と焼き鳥屋で話せってのか?最初の焼き鳥屋ぐらい"つなぎ役"で居てくれなきゃ…]

[最初の焼き鳥屋ぐらいって…その後も行くつもりなの?]

[そりゃ分からんさ。意気投合すれば場所を変えて呑むかもな]

[だって先日、給料前だからって……]

[いくら給料前でも、そのくらい有るさ]

一巳の返答に森はため息をついて、

[分かったわよ、焼き鳥屋までは要るわよ]

一巳は受話器を戻してパソコンへと向かった……


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