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「バイバイ」ではなく「サヨナラ」を…
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「バイバイ」ではなく「サヨナラ」を…-1

「ハッカ飴のね、このスーッてする感覚が好きなの」
 一年前、彼女がこの場所で言った言葉…。困った。痛いくらいに胸を締め付けている。
 女々しいのかもしれない。そんなのはすごく嫌だ。
 だけど、彼女‐香織‐のささいな仕草や言動が忘れられない自分がいる。
 香織の好きなもの、例えばそう、いま思い返している白いハッカ飴や、いま居るこの公園のベンチ…。
 気付けばいつもここに居る。座っているんだ。手にはハッカ飴の空缶を持って…。
 時が経ってしまった事だけは、わかっているつもりなんだけど。


 公園から子供の声がしなくなった頃、誰かが俺の横に座った。頭をあげその人物の顔を見てみる。
「香織…」
 俺の目の前には悲しげな顔をし、うつむいている香織が居た。
まさか俺の見間違えじゃないよな?確認のため、そして顔を上げてほしくて、
「香織?」
もう一度だけ、まだ愛する人の名を呼ぶ。
すると、香織の口が動き、
「智樹…」
俺の名を紡いだ。うつむき、悲しげな顔のまま…。

 俺になど会いたくなかったのだろうか?でも、もしそうなら、俺の横に座ったままなのは何故だ?どうして顔を上げてくれない?どうして、悲しそうな表情を浮かべたままなんだ?
いくつもの疑問が湧き困惑してしまう俺。

「……なんで…なんでなの?なんで…」
不意に彼女がそうつぶやいた。でもそれは俺に言っているというより、自分自身に問い掛けているように聞こえた。
「智樹…今でも好きなの…。なのに…、なのになんでもう会えないの?」

『会えない』!?
こうやって俺は隣に居るのに、どうして『会えない』なんだ!?
「香織、いま俺が隣に居ることは会ってることにならないのか?こうやって傍にいるだけじゃ、満足できないのか!?」
つい、声を荒げて言ってしまった。香織の前でこんな姿を曝け出したのは初めてかもしれない。
しかし、彼女は何も答えを返してくれなかった。それどころか、驚くことも怖がることもなく、俺の発言などなかったかのように振る舞っている。

 おかしい…、何かがおかしい…。
 俺の頭に一つの、とても重要な事実が浮かんできた。
 そうだ。俺は、いつ香織と別れたのか憶えていない。
しかもそれだけじゃない。
どんな別れ方をしたか、どちらから別れを切り出したか、全く記憶に無い。

 始めから俺たちは、付き合ってなどいなかったのか?俺のただの妄想か?
いいや、そんなことはない。
今でもこの眼は彼女の笑顔を、この耳は声を、そしてこの手は体温を忘れていない。
変わってなどいないはずだ。
 俺は確かめるために、香織の手に自分の手をのばした。
少し冷え性気味で冷たい俺の手を、いつも暖めてくれた香織の手。優しさとぬくもりに満ちあふれた手。
俺の手がその幸せに触れたはずだった。

しかし、現実は…。
香織の手はまるで空気のように、そこに存在しているのに掴み取れなくなってしまっていた。
その現実を体感し、俺は震えた。
そして、その現実から導きだされた答えに、残酷な答えに、再度俺は震えた…。

 そうか…、そうだったんだね。
―俺は死んだんだ―

 ベンチに並び悲しみにくれる俺と香織。お互いがお互いのことを想っているのに、それを分かち合うことは出来ない…。


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