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ロッカーの中の秘密の恋
【教師 官能小説】

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眠る恋の話 1-3

「マキはもっと広い世界を見たほうがいいよ。」
そう言って世界のいろんな国の話をしてくれた。どこの国が今、戦争をしていて、経済はどこを中心に動いていて、株価がどうだ、軍事がどうだ、とわからない私にも色々話してくれた。
私自身は身の回りのちいちゃいことが大事な人間だ。ベランダの花が枯れたとか、試験管の中の細胞が分裂したとか、近所のお蕎麦屋さんが値上げしたとか、本当に小さいことだけで私の世界は終わっている。そして、自分でも無意識のうちに周りを遮断して一人の小さな小さな世界に入り込んで埋もれる癖を彼は危なっかしいと言った。
小さなゆがみが生まれ始めたのは、いつからだったんだろう。知らないうちに、彼の方が私と距離をおこうとしていた。半年間、イギリスに行くことも、その後大学を辞めるときも、彼は一人で決めてしまった。私はいつの間にか取り残されていていた。
外に向かって変化を求める彼と、ひとところに留まって考え込む私とのあいだが広がって取り返しのつかないところまで来たと気づいたのは学部最後の学年になった頃だったろうか。すでに何もかもがちぐはぐで、もどかしいことばかりだった。
お互いが段々はなれていっているとわかっているのにそれをどうすることも出来ない。終わりを認められずに躍起になって、話し合おうとしたり、セックスをしたり、でも何か努力をすればするほど白々しさばかりが増していって、苛立つのだった。
それはそれは見苦しいほどの悪あがきをした。痛々しいほどに命乞いをした。彼にやめてくれ、といわせるほどひどい取り乱しぶりでつなぎとめようとした。一人にされることが怖いと思った。

「彼と別れるまで私、一人になったことが、なかったの。」
私は彼の上にすわったままぼろぼろと泣いていた。そんな私の涙を大きな手がぬぐってくれる。
「別に、彼の、、、ことがまだ好き、だから泣いてるわけ、、、じゃないのよ。」
言えば言うほど悲しくなって益々止まらなくなっていよいよ言葉も切れ切れで、それでもまだ話し続けた。
「結局、何度も話して、それでも、私は別れたくなくて、彼は私から、逃げるみたいに・・・・ひっこしていったの。」
目の前の男は私が泣いて取り乱すのを困ったような顔で見てサイドテーブルに手を伸ばしてティッシュペーパで後から後から溢れてくる涙を拭いてくれた。
「なぁ。にゃんこ、それでいいんだよ。みじめでみっともない思いのない恋愛なんてどこにもないよ。僕たちの間でだってこれからみじめなこともあるし情けない事もある。」
「でも、好きだった。」
何を言っているんだろうか、自分でもわからなかった。
「そうみたいだね。」
彼の表情は私をいたわりつつも決して穏やかではなかった。
こんなはなし、面白いわけはない。聞いて気分のいい物でもあるまいし。
「僕の知らないにゃんこをその前の男は知ってるんだろうと思うと癪だね。」
「しょうがないじゃない。長かったんだから。」
彼のどうしようもないやきもちが可笑しくてはれぼったい顔で笑いながら手を伸ばしてその首を引き寄せる。
あれ、と思った。このしぐさがこんなに自然にできたかな、と。
なんでもないときに、彼に好きだと伝えるのにためらいがあったのに。なにか、軽い気分だった。
「なんか話してすっきりしたみたい。」
「そりゃ、結構だな。僕は悶々としてきたよ。」
彼はそういいながら私の背中を撫でてくれて、久しぶりに泣いた私はその心地良さと疲れでそのまま眠ってしまった。

目が覚めたとき、ドアの向こうの廊下から彼のはなし声が聞こえた。いつの間にか掛けられている毛布の温度に絡めとられてもう一度目を閉じそうになる。誰と話しているんだろう、そう思った。再び甘い眠りに落ちそうになったその時、耳が捉えたのは女の人の名前だった。
マリコ、彼がそういったように聞こえた。
頭が冴えた。体を起こし間続きのキッチンに立つ。もう一度お茶を入れようと準備をする。
彼の奥さんの名前だ。
たまにくるダイレクトメールなんかにその名前を何度か見た。まだ、先生の話し声は続いている。何を言っているのかはわからないけれど。


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