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秘密
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秘密〜菖の恋〜-7

6
〜♪・・・

曲が終わる。
ぱちぱちぱち
先生が手を叩いた。
「上手いねー、歌。聞き惚れてしまいました」
にこにこと笑いながら、手を叩く。
かぁっと顔が赤くなってしまい、慌てて顔を伏せる。今更ながらに恥ずかしくなってしまった。
「・・・。」
「んじゃ、暗くなるから帰った方が良いな」
ピアノを閉め、電気を消した。教室が仄暗くなる。
「玄関まで送りましょうか?」
笑いながら手を差し出された。
ーなんか、楽しんでません?
手を上に乗せ、姿勢を正す。
「お願い致しますわ」



「お帰りなさいませ」
家に帰ると、いつもの景色が広がる。
 純和風の家に、沢山の小間使い。が、邸の主は滅多に帰ってこない。仕事か、別の女性の元へ行っているからだ。
「菖さま、哉嗣(チカシ)様が来ておられますが、」
如何なさいます?と尋ねてきた。
「異母兄さまが?何故?何かあったのかしら」
案内されて、東の室間へ行く。

「やあ」
くつろいでいる様子で迎えられた。
「何か、御用かしら?」
「冷たいね。相変わらず」
肩を軽く上げ、苦笑したように答える。
「御用は?」
無視して話を進めた。
「菖・・・、」
急に真剣な顔になり、ちょっとたじろぐ。
「父さんから話、聞いただろう?」
「・・・」
ソレが何?と異母兄を睨む。
「睨むなよ。俺が決めたんじゃないんだから」
「私は、守るつもりは有りませんわよ?」
「ー・・・酷いな。何が不満だ?」
す、と右腕を掴まれる。
「・・っ」
ぱしっと掴んだ手を払う。
「った」
「いい気にならないでくださいます?私は未だ14だし、母が違うとはいえ彼方は兄。お断り致します」
冷たくそう言うと、そこを離れた。
「ー・・・・残念」
複雑そうに顔を歪め、私の方を見つめていた。


『一族の為に、お前には哉嗣と結婚して貰う』

 父であり、一族の筆頭である者にそう言われたのは、三日前。
父の正妻は私の母。けれど、母には私しか子供がいない。そこで跡継ぎとして名前が上がったのが哉嗣。父の長男であり、今年二十歳になる異母兄は、跡継ぎとして問題はない。だけど、私の母の実家がそれを認めるはずはなく、困っていたときに思い付いたのが、私と哉嗣の結婚だ。
丁度良いことに哉嗣は認知されておらず、私と哉嗣が兄妹と知っている者も数少ない。だから、私と哉嗣の婚約が整えられた。

「何なのよっ。お父様は、私の気持を無視してっ」
ばんっと自分の部屋の襖を荒々しく開ける。
「・・っ」
ぽたっと涙が畳に落ち、染みていく。
ー嫌だいやだイヤだイヤダイヤ・・・
涙が止まらない。溢れだす。
 分かっていた。いつかは誰かと結婚させられること。最初は、哉嗣との結婚を受け入れた。けれど、私は好きな人が出来てしまった。
-7-


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