投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

COMPLEX
【コメディ 恋愛小説】

COMPLEXの最初へ COMPLEX 6 COMPLEX 8 COMPLEXの最後へ

COMPLEX -act.2(前)--3

話しかけるべきか?
だったら何て?
『おはよう』は何かヤだな。
『ウッス』はキャラじゃないし。
うーん、と考えている間に、佐伯がこちらに気付いてしまったらしい。
「あ……」
聞き取れないほどの声で言って、彼女はうつ向いた。
「お、おう」
か、会話が……。
俺は必死で話題を探した。偶然会ったこと自体が話題なのだが、テンパっているためそんなことには気付けない。
そんな俺に対して先に口を開いたのは佐伯だった。
「ぐ、偶然だね……」
「……」
佐伯が自分から話しかけてくれたことに感動して、俺は返事ができなかった。
「麻生……くん?」
「あ、あぁ」
佐伯の不思議そうな顔に覗きこまれて我に帰る。
またもや息苦しい沈黙。
それに俺が耐えられなくなった頃、空気に似合わない陽気な音楽が鳴り始めた。
突然の音にビクリと体を震わせた佐伯が、カバンをゴソゴソやり始める。
「もしもし」
オフホワイトの携帯電話のディスプレイを確かめて、落ち着いた声で話し出した。
電話では緊張しないのか、どもったりはしない。
俺も今度からちょくちょく電話かけよっかな。
あ、でも俺、佐伯の携帯番号知らないや。
教えて、とか言えないし……うーん。
悩んでいると佐伯がすっとんきょうな声を上げるのが聞こえた。
「はぁ!?」
少し整えただけの片眉がつり上がり、眉間には軽く皺が寄っている。
うわぁ、初めて見た。
それすら可愛らしく見える俺はアホだろうか?
「う、あ?えぇっ!?」
今度はみるみる顔が赤くなっていく。それこそユデダコみたいに。
つーか、電話の相手、誰?誰!?誰!!?
頬を紅潮させて喋る佐伯に、俺は少しだけイライラしだした。
電話の相手が男か女かは知らないが、どっちにしろ俺にしてみれば嫉妬の対象である。
せっかく休日に会えたってのに、横取りしやがって。
「え?……う、うん」
しばらく小さな声で話していた佐伯が、また少し大きめの声を上げた。
携帯を耳から離し、通話口を手で抑えて俺の方を見る。
「あの……麻生くん」
視線を泳がせながら、俺に携帯を差し出した。
「……俺?」
出ろということだろうか?
佐伯がコクンと頷く。
「誰?」
携帯を受け取り、佐伯と同じように通話口を手で抑えながら聞く。
俺に代われということは、俺と佐伯両方の知り合いだろう。一応聞いたが、大方予想はついていた。
「……京介」
やっぱりね。
俺は開口一番怒鳴ってやりたい気分で携帯を耳に当てた。
「何?」
ブスゥッとした声で言うと、思った通りの軽い声が返ってくる。
『やぁーん、ハジメくんたら恐ぁーい』
「切るぞ」
俺は本気で切ってやろうと終話ボタンを押し掛けた。


COMPLEXの最初へ COMPLEX 6 COMPLEX 8 COMPLEXの最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前