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COMPLEX
【コメディ 恋愛小説】

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COMPLEX -act.2(前)--2

「二人とも早く食わねぇと5限遅刻すっぞぉ」
あんな風に笑って愛想よく話しかけられたら……ん?タチバナ?
いつの間にやら窓から身を乗り出した橘は、外の佐伯と高崎に声をかけていた。
声に気付いた二人が、こちらを見上げる。
「うっさいわよ!バカじゃないの!?」
佐伯は、橘に向かって怒鳴る高崎の隣で苦笑いを浮かべていた。
その視線が少し動く。
───目が合った。
1秒、2秒、……そらされた。
佐伯はフイと視線を落とすと、食べかけの弁当を食べ始めた。
やっぱ、絶対怖がってる。
事実をつきつけられたような気がして、俺は打ちひしがれた。

この時の俺は、自分の知らないところで、とある計画が進行中だということに、気付いていなかった。

うちの学校は、ゴールデンウィーク明けすぐに中間テストがある。
よって、5月に入ると部活動は休止期間に入るわけで、俺や橘の所属するバスケ部も例外なく休みになった。
───プルルルル……プルルルル……
ゴールデンウィーク1日目、俺の朝は一本の電話から始まった。
「ん……ったく、誰……?」
俺は寝起きの悪い方じゃないと思うが、時刻は休日の朝7時である。不機嫌になるのも仕方ないだろう。
「……もしもし」
『もしもーし』
ディスプレイに映し出される発信者番号も確かめずに出ると、不愉快なほどに明るい声が聞こえる。
「……」
『あれ?起きてる?京介ちゃんよーん』
ふざけまくった声に、携帯を床にたたき付けそうになるのを際どいところで思いとどまる。
「……何か用?」
怒りを抑えて尋ねると、自分のこめかみがヒクヒクしているのが分かった。
『そーんな言い方しちゃっていいのぉかなぁ』
怒りを更に煽るような言い方に、俺はブチッといく寸前である。思わず強い言い方になる。
「だから何!?」
『今日、午前10時30分、香坂高校前バス停』
「は?」
これまでのふざけた口調とは打って変わって冷静な早口で言われたため、理解できない。そんな様子に、橘はもう一度、ゆっくりと繰り返した。
『だぁかぁら!今日、午前10時30分、香坂高校前バス停!!』
「はぁ……」
それが何だっていう話だが。
『行けば分かるから』
橘はそれだけ言って、いきなり電話を切った。
「お、おいっ!橘?橘!?」
呼んでも聞こえるのはツーツーという虚しい電子音だけ。
「何なんだよ、いったい……」
俺は携帯を見つめて首を捻るばかり。

バス停に着いたのは午前10時20分だった。
「ここ、だよな……」
言いながらバス停の名前を確認する。
『香坂高校前』
間違いない。
しかし、バス停には誰もいなかった。
さては橘にはめられたか?
新手の嫌がらせか?
などと考えていたら、バスがやってきた。
バスはキキィと音を立てて停まり、ドアを開けて人を吐き出す。
俺は特に気にもせず、バス停の椅子に座ってぼんやり見ていた。
「!!?」
相当間抜けな顔で驚いただろうと思う。
バスから降りる人の中に、俺は佐伯を見つけたのだった。
白いワンピースにピンク色のボレロを羽尾った佐伯は、学校での印象とは違って見える。
佐伯はバスを降りた後、キョロキョロと辺りを見渡して、誰か探しているようだった。
───まさか、俺?
俺の心をわずかな期待が横切る。
しかし、よく考えると俺がここにいることなんて知らないはずだ。
有り得ないか……。
自分の妄想に軽いショックを受けつつ、俺の目はまだ佐伯を追っていた。


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