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『孤独と恋について』
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『孤独と恋について』-3

ところで、タケは外見に訴えるようないい男では決してなかった。そして、最高の性格を持ち合わせてもいないと思う。にもかかわらず、意中の恋人を獲得できた。まあ世の中は、そんなものなのだろう。なぜか僕が、ある女の子から愛されたように…。時間の砂はいつの間にか、さらさら落ちて、僕らは中学を卒業する年齢になった。
その女の子は、名前をミカと言った。同い年で、学校のクラスが違ったので、それまでは話したことがなかった。ところが、ある日の放課後、可愛い女の子から手紙を渡されて、なんと彼女が僕に恋してるらしいと知った。
僕は「ひとめぼれ」という言葉は知っていたけど、それを信じてはいなかった。だから、手紙からミカが僕にひとめぼれしたことを知っても、それに対する解釈ができず、難儀した。
タケに相談してみると、彼はこう言った。
「解釈はいらん。ようは、彼女はお前の見た目が気にいったんだろう。」
僕は、それが気に入らなかった。いや、ミテクレを好いてくれるのは悪い気もしないが、僕は僕の中身を知る人に好きになって欲しかったし、また中身の素晴らしい人を好きになりたかった。タケにそう返すと、こう言われた。
「それなら、なおさら1度付き合ってみればいい。お前の中身を知ったら、きっと彼女、お前に惚れ直すぜ。保証する。それに、ミカの評判はなかなかいい。ラッキーなんじゃないか?」
タケにそう言われると、成程そうか、という気になった。昔は年上の女性に憧れたが、この年齢になると、年上であることにそれほどの魅力は感じなかった。平たく言えば、同い年の女の子は、すでに充分魅力的だった。僕はミカと付き合うことにした。
実際にミカと付き合ってみると、彼女は悪くなかった。一緒に出かけたり食事をするのは楽しかったし、ミカは僕の話をよく聞いた。この点は話好きな僕にとっては大きなポイントだった。ミカ自身も話が好きで、僕は彼女に関する色々なことを知った。なかでも、音楽をたしなむことは、いい印象を僕に与えた。ピアノを弾くと言うから、僕は彼女の弾くピアノを聴いてみたいと思った。
また、相手が女の子であるということは、当然だが、別の楽しみがあった。僕は、性に関しては知識に事欠かないから、是非ともそれらを実践してみたい衝動にかられたのである。が、あまりガツガツすると嫌われることを知っていたので、露骨なそぶりは控えた。
ただし、僕はミカに好感を抱くようにはなっていたが、まだ彼女を愛してはいなかった。だから、彼女の髪や肌に触れたい、キスしてみたいと思えば思うほど、そんな欲望と愛のもつ距離に悩まされた。そんな大それたことをしてもいいのだろうかと自問して、明確な答えが出た例しはなかった。しかし、僕の欲望は理性を必死でそそのかした。もうお前はミカを愛しているはずだ、と。僕の騙されやすい理性はやがて、そうなのかな?と思うようになった。
さらに、ミカ自身は、僕の欲望の味方だった。彼女は見た目がとても可愛く、長いまつげや大きな二重の目なんかは魅力的だったし、スタイルは並より上だった。それだけで彼女は十分な罪を背負っていたのに、その上、彼女は僕との関係が深まるのを期待しているようだった。僕の理性はついに音をあげて、もはや彼女を愛していようが愛していまいがどうでもよくなった。僕はまず彼女にキスしてやろうと思うようになった。


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