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放課後の背徳準備室
【教師 官能小説】

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放課後の背徳準備室-8

2月、大学入試。


「……ですか?」
「ええ」
冷える校内の廊下と違い、暖房の熱気でムッとする職員室で、早戸は聞く。
伊吹らしい名前を見つけてしまったクラス担任に。
「あの娘は…、う〜ん、真面目ですよ。そう、真面目で努力家ですね」
顔をしかめながら必死で言葉を探そうとする担任に、不思議な違和感。
僕が知っている伊吹とはイメージが違う。
可愛くて天真爛漫で大胆で、淫らな…。
しかし伊吹が2年の時、化学を受け持っていた僕こそ記憶にないのは変な話だ。
「どんな顔をしていますか?」など聞けない。
代わりに、
「今日、学校にいますかね?」
「自由登校だからねぇ。今、受験シーズンで来ていないんですよ」
「そうですか…」
「彼女が何か、早戸先生?」
「いえ、聞きたいことがあって…」
「あ〜そう。卒業前に何かあったら大変ですからね!」
がはは!と笑う相手につられて、早戸も微笑う。


そうか。
卒業か…。

(…黙って消えるつもりだったんだな、伊吹…)

だけど、そうはいかないよ。
今までの伊吹を思うと、すべてが愛おしい。
細かいことはどうでもいい。大事なのは…。



「おめでとう!」
「ありがとうございます」
第一志望合格発表があったその足で、わざわざ学校に来た伊吹。
職員室で担任に報告しなくても電話で済ませてもよかったのだが、早戸先生の姿を見たい一心で…。
今日は会わない。
本当は会うつもりだった。頑張った自分へのご褒美として。
でも年末、先生の気持ちを知ってしまってはもう…簡単に会えない。

(先生…私を見つけられるかな…?)

このままバレることなく『伊吹』のままで通せたら諦めよう。
最初に、自分に賭けた通りで。
先生が好き。ただそれだけでよかったの。
それが叶うなんて…。
これ以上、欲張っては罰当たり。
だから先生に見つけてもらうの。
本当の私を。
『伊吹』じゃない素の私を…。

(それでも、…好きになってくれますか?)


職員室を出た。
すると、左の視界で階段を下りる早戸の姿を捕らえた。
相変わらずよれよれの白衣で、伸びっぱなしの髪、柔らかな顔立ちに添えた縁なし眼鏡。
階段の1段1段を、俯きながら足を運んでいる。
踊り場の窓越しの陽が、早戸の背後を眩しく照らす。
2Fの化学準備室から出たところなのだろう。
きゅうぅん、と胸が切なく騒ぐ。


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