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【魅惑のお客サマ。】
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【魅惑のお客サマ。-2-】-3

「やっ…!」
「ヒヨコ…」
(こんな状態で顔を合わすなんて冗談じゃない!!)
グッ、と力を込めてアヤトの腕に抵抗する。
恥ずかしくて仕方がない。
アヤトの吐息が耳にかかる度に、背中がゾクゾクして涙が出る。
「ひゃっ…」
ペロ、と不意に耳を舐められた途端に体の力が抜けた。
「何泣いてんの…?」
声がして目を開けると、苦しそうに眉をひそめたアヤトの顔が飛込んできた。
至近距離でそんな顔をされたら、誰であろうとドキドキしてしまう。
「ヒヨコ…」
名前を呼ばれて、彼を見つめた。
熱に浮かされたような目も、私を見つめる。
「ふ…あ」
頬を撫でられて、思わず目を瞑った。
その途端に、首筋に柔いものを感じる。
何度も、何度も。
それが唇だと、キスだと分かるまでに時間が掛った。
「な、何してんの?!」
「甘い…」
私の声など耳に入っていないかのように、アヤトは所構わず唇を触れさせる。
「も…やめ…」
触れられた所から、ジンジンと痺れてむず痒い。
「じゃあ…俺を見てくれる…?」
そう言いながら顔を上げたアヤトは、眉間に皺を寄せて、泣きそうになるのを我慢しているようだった。
それは、幼い頃からの彼の癖。
(可愛い…)
ふと、そんな想いが頭をよぎる。
次々と溢れる想いで、頭の中は渦を巻く。
可愛い、と。愛しい、と。
(…愛しい?)
愛しくはない。愛しくなんかない。
中々答えない私に痺を切らしたのか、アヤトは頬を挟んで顔を固定した。
顔に掛った髪を払い、耳にかける。
そして、私の唇を指でなぞると微笑んだ。
「俺の事しか考えらんねーんだろ…?」


…――

「雛!!何時まで寝てるの!!」
階下から聞こえる母親の声で目を覚ました。
朝からこんなんじゃ、近所に迷惑がかかるだろう。
「うう…」
完全に開ききってない瞼を擦りながら、私は寝返りをうった。
いや、うったつもりだった。
(体が動かない…)
何かに掴まれているかのように、寝返りをうつ事が出来ない。
「うあ…うごかな…」
モゾモゾと体を動かしながら寝返りをうとうとした、その時だった。
ケラケラ笑う声が聞こえてボンヤリと目を開ける。
「ヒヨコ、可愛い」
(だ、れ…だぁぁぁっ!!!!)
バッ、と飛び起きると隣には驚いた顔のアヤトがいた。
「ななっ、何で変態!!勝手に部屋に入らないでって言ったじゃない!!」
レディーの部屋に勝手に入って、しかもベッドに寝そべって笑ってるなんて…!!
ワナワナとこみ上げる怒りを抑えながら、退室命令を告げようと口を開いた。
「今すぐ出「ここは俺の部屋だよ?」
「え?」
「昨日…ね」
(昨日…?あ、あぁぁぁぁぁっ!!)
昨晩の出来事がフラッシュバックして頭の中に蘇る。
首筋に感じた痺れ、年下の男に感じた色気、あと…あと…


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