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【魅惑のお客サマ。】
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【魅惑のお客サマ。-2-】-2

「ばーか」
(だ、騙された!!)
所詮ガキはガキ。どんだけ大人びていようと、思考は中学生。そこらにいる近所の中学生と何ら変わりはないんだわ!!
「だからヒヨコって可愛い」
……例え女の扱い方を知っていようともね!!
顔を背けた拍子に、机の上にある時計が目に入った。
「あ、私戻る」
もうすぐ9時だ。見たい番組が始まってしまう。
(遊ぶのは、もう終わり)
「中学生は寝なさいよ、9時だから」
さっきからずっと立ってこっちを見ているアヤトにそう言って、私は部屋から出ようと歩く。
「こんな時間に寝れねーよ」
不機嫌そうな声を掛けられて、返事をしようと振り向いた時だった。
「ちょっ…!」
「一緒に寝よ」
私の鼻先が、アヤトの胸をかすめる。
背中に回された腕にゆっくりと力を込めると、更に強く引き寄せてきた。
「は、放して…」
両手を駆使して離れようと手を伸ばすけど、どんだけ力を入れても益々近付く一方だ。
「お、起きてて良いから…」
「俺眠いから…ね?」
(嘘つけっ!)
それまでは、心の中で叱咤する余裕があった。
けど、次の瞬間…
「ぎゃあっ!!」
いきなり腹を掴まれたかと思いきや、アヤトは私を持ち上げて肩に担いだ。
そして、そのままベッドに向かって歩き出した。
「ちょ、降ろし「ヒヨコ、重たい」
妙な浮遊感に戸惑いつつも、私はその失礼極まりないセリフを聞いてアヤトの頭を叩いた。
「痛っ!」
「レディーに対して何て事言うのよ!」
右手がお尻に触れているけど、この際どうでもいい。
体重について触れられる方が、私にとっては問題だ。
「うーそ」
そう言いながらアヤトは、しゃがみ込みながら左手を私の背中に回して静かにベッドに降ろす。
「な、何し「重くないよ」
仰向けになった私の頭を撫でながら、アヤトは床に座り込んだ。
ベッドに肘を突き、いつもみたいに意地悪く微笑みながらもう片方の手で私の髪をいじる。
「私、テレビ観たいんだけど」
起き上がろうと上体を上げると、アヤトは髪から手を離して肩をポンと押す。
カクン、と体がベッドに落ちた。
「ふぶっ」
「何だその声…」
背中を打った拍子に出た声に対して、アヤトはくすぐったそうに笑う。
でも直ぐ様普段の表情に戻すと、声色を低くして言った。
「俺を見てれば?」
「…ナルシスト?」
やっぱり、ちょっとばかり顔の良い男は自信過剰になるのだろうか?
確かに、その泣き黶は欲しいですよ?色女の象徴みたいな?
「ちげーし」
気分を悪くさせてしまったのか、声色が不機嫌になる。
思わず、おでこに冷や汗が流れた。
(やっぱり、禁句だったのかも…)
再び撫で始めた頭をいつ殴られるかと思うと、その光景から目を離すことが出来ない。
すると、彼は立ち上がって、おもむろにパーカー脱ぎ始めた。
「ななな、なな何し…」
思わず彼に背を向けて壁を見つめる。
服を床に落とすと、今度はベッドに乗っかり私に覆い被さってその上から布団を掛けた。
はたから見れば、それは…
「つーか、俺だけ見てろ」
耳元で囁かれるその言葉に、私は顔を真っ赤にする。
横向きになった私を仰向けにさせようと、アヤトは私の肩に手を置いた。


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