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Besinnung(春→夏)
【悲恋 恋愛小説】

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Besinnung(春→夏)-2

彼はのろのろと,片手を振りつつ近づいてくる。そして「久しぶり」とだけ言ってはにかんだ。待ち合わせ場所に来たばかりの車はよく冷えていていて,乗り込むと足下に冷気がすぅっとかかった。
彼は車内でも,そんなに沢山のことは喋らない。いつも電話では,色んなコト話しているのに・・・「緊張してる?」そう言った私も声がちょっと掠れていたかも。誰だかよく判らない歌手の歌が静かに響く。
多分、お互いに緊張しているのは、別に久しぶりにあったからとかじゃない。
この間、あたしは彼に「好きだ」っていってしまった。
彼氏と喧嘩をして、自暴自棄になって泣いた。そんなときに優しく慰めてくれる彼の声を聞いて・・・。言えなかった想いが涙と一緒に全部出てった。
あたしは自ら、彼との間に作ってた壁を壊してしまったんだ。
彼はあたしの気持ちを知ってる。
今までとは違う雰囲気が車内に流れていて、よくわからない歌手の歌はいつの間にか終わっていた。

目が覚めたらベットの上だった。あたしは彼の横で,丸くなって寝ていたらしい。彼はずっと起きていたんだろうか,あたしが起きたのがわかったようで,軽くおでこに唇をあてた。
どうして人って誰かとくっついていると幸せになるんだろう。
誰でも良い訳じゃないだろうけど,あたしの場合は例外かも知れない。兎に角誰かが側にいれば,それで安心できるんだろう。
なんでこんなコトを考えるかと言えば,それは彼に対する境界線作りで。
彼はあたしを「好き」だという。だけどそれは彼女みたいに「愛してる」ことではない。あくまであたしは彼にとって友達か、妹みたいな存在なんだろう。一緒に寝たから恋人なんて考えは,きっともう通用しないもので,あたしだってそんなことはわかっている。
だけど,あたしはずるいから,誰にでも愛されたい。誰にとっても一番でありたい。
彼氏が私だけを愛してくれるように,彼にもあたしだけを愛して欲しかった。
ただそれだけのことなのに,それだけのことが出来ない。
彼はそんな考え持ってないから・・・
だからこう言う。
「好きだよ」
嬉しいのに辛い,そんな言葉。あたしは彼の一番には決してなれない。
優しいのに冷たい,そんな人。いつまであたしはあなたと居るんだろう。

だけど。
貴方が居なくなっちゃうなんて考えられないから,午前3時46分。
「・・・もしもし?」
「やっぱりかけてくると思った」
そんな台詞も今は嬉しいの。


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