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恋の奴隷
【青春 恋愛小説】

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恋の奴隷-7

「なぁ柚姫、帰りもあいつに付きまとわれそうなら…一緒に帰らねぇ?ほ、ほら!帰り、一緒だろ?方面…」
委員会があると言って申し訳なさそうに夏音が教室を後にし、帰る支度をのそのそとしていると、何やら緊張した面持ちでヒデが話しかけてきた。
「え…ホントッ!?ありがとぉッ」
ヒデが気に掛けてそう言ってくれたのが嬉しくて私はにっこりと笑顔で答えた。何だか一人で帰る気になれなかったから。
「おう…じゃ、帰ろうか」
ヒデの頬がほんのりと赤く染まった気がしたのは気のせいかしら。そんなこと考えて首を傾げてヒデを見つめていると、ヒデが目を泳がせてくるりと私に背を向け歩き出したから、私も慌てて後を追い掛けた。
ヒデが心配してくれたようなこと―優磨は学校を出て駅に着いてからも見当たらなくて一緒に帰って貰っている手前、何だかヒデに申し訳なくて、私は帰りに寄り道をして帰ろうと提案した。
「よく夏音と帰りに寄るんだけどね、ここのクレープすっごく美味しいんだ!今日はヒデにいっぱい愚痴聞いて貰ったから柚がお礼に奢ってあげる!」
にへらと笑い掛けるとヒデもにかっと白い歯を見せて笑い返してくれた。
「柚姫のオススメは?」
「うーん…ストロベリーダブルアイスクリームかな?」
ずらりとクレープが並べられたショーウインドーを食い入るように見つめながら真剣にそう答えると、
「じゃあそれ2つで!」
とヒデが店員さんに注文して、早々と代金を済ませてしまった。私が急いでお財布を鞄から取り出すと、
「いいよ、俺が柚姫と帰りたかったんだから」
と照れ臭そうにヒデが頬をポリポリとかきながら、はにかんだ笑顔で言うものだから、
「あ、ありがと…」
何だか恥ずかしくなってヒデを直視出来ずに、私達はそのまま近くの公園へ移動した。
「うわッ!すげーうまいッ!」
公園のベンチに腰掛けて、クレープを口にすると、ヒデは目を見開いて大袈裟にそう言って顔をほころばせる。無邪気に笑うヒデを見ていると私まで嬉しくなって。
「ヒデって犬みたい」
ふふッと笑いを漏らすと、ヒデは何だよそれ、と眉を八の字にして困ったように笑いながら言った。
「なんか犬みたいで可愛いんだもん」
「あんま嬉しくねぇーよぉ」
ヒデはしょんぼりと肩を落として言う。
「あははッ!ゴメンゴメン!ヒデはさ、彼女とかいないの?」
「ぶほッ!」
私の問いにいきなりヒデがむせて、私は慌てて近くの自販機でお茶を買って渡した。
「サンキュー…柚姫いきなり変なこと聞くなよ」
ヒデは涙目になりながらお茶をゴクゴクと飲み干す。
「変?だってヒデって優しいしすぐに彼女が出来てもおかしくないでしょ?」
あっけらかんと言う私に、ヒデはふっと頼りない笑みを浮かべると、
「俺は好きでも相手がさ…」
と私を見つめながら切なそうに言った。私はヒデのそんな目を見て胸が痛くなった。
「そっかぁ…ヒデの良さが分からないなんて勿体ないね、その子…」
「…鈍感」
「へ!?」
私が間の抜けた声を出すと、くっくっと笑って。何でと聞いてもさあね、としかヒデは答えてくれなくて。結局その言葉の意味は分からなかったのだけれど、そんな風にじゃれ合いながら私達は楽しい時間を過ごした。

「家まで送ってもらっちゃってゴメンね?」
「気にすんなよ!また何かあったら話し聞くしさ」
ヒデが屈託のない笑顔でぢゃあなと手を振り、段々と小さくなって消えていく後ろ姿をぼんやりと見つめながら、ヒデは私の救世主みたい、なんて考えていたところで、
「誰だよアイツ…」
後ろからいつもより何倍も低い優磨の声がして、恐る恐る後ろを振り向くと、腕を引っ張られて優磨の腕の中に身体を持っていかれた。
「ちょッ!?優磨!?」
優磨の腕の中でジタバタともがいてみても全くもって無意味で、諦めて上を見上げて優磨を睨みつけると、優磨も恐ろしいくらい目を吊り上げていて。その様子にビクリと身体を震わし目を伏せると、優磨は私の髪に両手を差し入れて、自分の顔へ引き寄せる。


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