アツイ想い。2-1
某アクセサリーショップに勤務する神崎 舞(22歳)はため息をつきながら仕事をしていた。
(この前の出来事は夢だったのではないだろうか…)
この前の出来事とは、ホストクラブで知り合った鳳城 雅夜(ほうじょうまさや)と一夜を共に過ごしたことである。
数回しか会っていないのに、しかも付き合ってもいないのに体の関係を持ってしまったことに後悔していたのだ。
(ヤラせてくれる軽い女と思われていたらどうしよう…)
「ハァ…」
ため息が止まらない。
あの日以来、雅夜から連絡が来ない。こちらから連絡してもウザがられるのではないかと思い、何もできない。
再び舞に平凡な日々が戻っていた。
家に帰りシャワーを浴びた。体が雅夜との夜を覚えている。なんだか胸が熱くなって来て、苦しい…
雅夜に…会いたい!
いてもたってもいられなくなり、夜の繁華街へ駆け出していた。
この時間なら雅夜はキャッチに出ているかもしれない。
雅夜の姿を捜すが、見当たらない。諦めて帰ろうとしたら急に心臓が激しく動き出した。
雅夜が目の前のコンビニから出て来たのだ。急に緊張してきて手が震え出す。声をかけようと思ったら女の声がした。思わず舞は隠れた。
「ちょっとー雅夜待ってよ!」
見るからにホステスっぽい女は雅夜の腕にしがみついて、まるでカップルのように繁華街へと消えて行った。
舞は何も考えることが出来なくなり、とぼとぼと家に向かった。
(やっぱり雅夜にとってあたしはただの客なんだ…マクラされて浮かれてバカみたい)
結局、雅夜のアドレスも消した。
舞はあの日の出来事は、ただナンパされたやつと一夜を共に過ごしただけだ。
と、自分に思い込ませ忘れようとした。
―翌日―
いつものように仕事に出掛けた。
でもちょっと寝不足だった。
忘れよう、忘れようと思い過ぎた為、昨日の夜の出来事が夢に出て来て目が覚めてしまうのだ。
「神崎さん?大丈夫?顔色悪いわよ」
上司にまで心配させてしまった。
「すみません。ちょっと寝不足で…でも大丈夫です!お昼食べたら復活します!」
「お昼食べれる元気があるなら大丈夫ね。でも無理はしないでね」
「はい。ありがとうございます」
…はぁ、なんで私用を仕事に持ち込んでるんだろ…自分が情けない!明日は仕事休みだし、ゆっくり休もう。
自分で自分に腹が立った舞は気合いで仕事に集中した。
そして、もうそろそろ閉店という時に一人のお客様がお店に入って来た。
その人を見て、舞の心臓はフル回転で作動した。
舞自身も、自分の心臓がうるさいくらいに動いているのを自覚した。