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『Lactic acid』
【スポーツ その他小説】

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『Lactic acid〜2体育祭編』-3

 しかし、俺のその予想は覆される。50mを越えて、平賀の体が半分グンと俺の
前に出たのが視界に入ったのだ。そして、体半分が次第に大きくなり、平賀の背中を見えるまでになった。
 平賀は50mを越えて尚、加速したのだ。
 平賀に気をとられていると今度は榊の体が半身程俺をリードしていることがわかった。そのままの形でフィニッシュ。
 結果、ダントツで平賀が1着、2着は榊、3着は俺。榊と俺の差は0.03秒だったが、平賀俊介とは1秒近く差が開いた。
 
 フィニッシュ直後、ピンクのTシャツのやつらが沢山狂喜乱舞していた。
 汗ばんだ体に、ピンクのやつらのせいで舞い上がった砂埃がまとわりつく。
 
 (気持ち悪りぃ・・・)

 俺は汗を袖で拭うと、そのまま部室に向った。まだ最後のリレーが残っていたがクラスの一人に代わってもらった。もう、体育祭に参加する気は俺にはなかった。このまま、部室で終わりまで過ごそうと考えていた。
 部室を開けると、そこには既に先客がいた。
 「榊もか」
 「よお。お疲れ」
 榊は部室にあるいすに座り漫画を読んでいた。
 俺も近くの椅子に座った。
 やっぱりこの部室は臭い。
 「やっぱ、100専は速いわ」
 「・・・・」
 榊は俺に顔を向けるが何も言わない。ただずっと俺を見つめるだけだ。
 「50から違うよな。伸びるもんな」
 榊はやはりなにも言わない。
 「なんだよ。なんか言えよ」
 俺は榊の沈黙に耐えられずに言った。すると榊は手に持っていた漫画を放り投げた。
 「俺は後半伸びるスプリンターじゃない」
 「えっ?」
 「俺は後半型じゃない。前半のスピードを維持するに過ぎない走りなんだ。俺のレース見てないか?俺の負けパターンのほとんどは後半さされて終わり。だから、さっきのレースは俺が伸びたんじゃなくてお前のスピードが落ちたんだ」
 そう言うと、榊は部室に飾ってあるインターハイに出場した時の平賀俊介の伸びやかに走っている写真を外した。
 「本当に後半型なのは俊介だ。ヤツの地域大会の決勝見たろ?あれが、全てだよ」
 平賀は隣接の6府県の代表で競う地域大会で優勝した。その決勝レースの様子は最終コーナー手前まで平賀は3番手だった。しかし、多くの選手が最終コーナーで減速していく中であいつだけ、スピードを全く落とさずに前にいた2人をさしたのだ。
 その時のタイムが今のところの平賀の今季のベストである47秒38だ。
 
 榊が帰った後も、俺は暗くなるまで部室にいた。
 体育祭がどうなったのかは知らない。でも今はそんなことより、平賀に自分が
どう頑張っても勝てないことに落胆していた。


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