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「想末、イモウト」
【純愛 恋愛小説】

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「想末、イモウト」-3

彼女は、「妹」のままだったのに。

不意に鼻の奥がツンとし、小さな手を更に強く握り締める。
「恋…愛してる…愛してる…。」
何度も、「愛してる」を繰り返す。そうしないと、彼女にこのまま俺の欲望をぶつけてしまいそうだったから。
髪を撫で、手を握り、語りかける。
幼いまま生きてこれたら、どんなに良かったか。
周りの目が冷たいのか、または俺等が異常なほど仲が良かったのか。
彼女には聞かせていないが、「歪んだ兄妹愛」だと何度言われたことか分からない。
それは、小学校の高学年にもなれば意味が分かる奴が出てくるからだ。
昔、バレンタインで告白をされた時に言われて知ったのだが。
好きでもない女にチョコを渡され断った理由は、他に好きな奴が居るからだった。
すると、女は言ったのだ。

『翠君と恋ちゃんは、本当の兄妹じゃないもんね。』

俺を狂わせるには、充分な言葉だった。
何年間も、想い愛してきた恋が妹ではない。
親が、必死で隠してきた事を知った瞬間だった。
その後、受験や何やらの理由で戸籍謄本を調べた。
「相葉 翠」から、今の名字である「嘉山 翠」へ、一度だけ名が変わっていた。相葉というのは、母親の性だったようだ。
彼女は、変わっていなかった。ずっと嘉山だった。
自分の子ども達は騙せても、周囲の目は騙せない。
それが親から子へ伝わったから、あの女も知っていたんだろう。
とにかく、俺は彼女が実の妹ではないという事実に酷く焦っていた。
このままでは、彼女を壊してしまうキッカケになるのは間違いない。
(離れよう。)
俺はそう決意し、妹に関わらなくなったのだ。
彼女がどう思おうと、そんなのはどうでも良かった。
ただ、自分を守るために必死だった。
なのに……
「翠…」
どうして今俺は妹の手を握っているのだろう。
寝言で俺の名を呟く唇から、目が離せない。
喉がコクン鳴って、その音がこの静かな部屋に響いた事に驚く。
(寝てるなら…良いかな。)
そっ…と彼女の頬に手をあてる。
顔を近付けて、自分の唇を相手のと重ね合わせた。
今までしてきたキスの中でも、一番甘い気がする。
(自分からキスするとはな。)
来るものは拒まず、去るものは追わずな俺は、自分から求めるような事はしない。
だが…
(恋…。)
俺は、机の照明を消す為に立ち上がる。
スタンド電気を消した後ベットに戻り、布団の中に入り込んでから彼女の体に覆い被さった。華奢な体は、すっぽりと包み込める程だ。
先程とは違う、貪るようなキスをする。それに応えてくれる事はなく、未だ眠り続けている彼女。
「恋…愛してる。」
そう呟いて、俺は彼女の横に寝転がった。
反動でスプリングが浮き沈みし、胸元に寄せてあった彼女の腕が俺の肩へ当たる。
その手をもう一度握り締め、彼女の体に布団を掛け直す。
そして、俺はゆっくり瞼を閉じた。

目覚めても、恋が隣に居ることを願って。

昔の俺に、戻ることを誓って。

それは、イモウトを想った末の決意だった。

●End●


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