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詩を風にのせて
【ファンタジー 恋愛小説】

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詩を風にのせて 〜第2話 旅立ち〜-1

朝9時。
ユキたちは街に着いた。
そこはユキたちが暮らしていた村より大きく、商店街は人々で混み始めていた。
「ずいぶん大きな街みたいね。初めて来たわ」
サクラが感嘆を漏らす。
「俺なんか村の外に出ることが初めてだ」
そう言って、ユキは街のあちらこちらを見渡す。
「お金はどのくらいある?とりあえず宿を探そう」
レオの提案にユキとサクラは頷き、街を歩き始めた。
そして商店街を少し進み、ちょっと裏路地に入ったところにかなり古い旅館があり、そこに泊まることになった。どうやら、3人が一晩泊まるくらいのお金は持っていたようだった。

「これからどうする?」
やや重苦しい空気を割ってサクラが言う。
「そうだな、この街で住むのが一番いいんじゃないのか?」
レオはもともと考えていた答えを口にした。
だかユキは反対のことを言う。
「俺は…旅をしたい」
妖精エイミ・リーシェルとの約束もあったが、ユキは純粋に世界を見て周りたいと前々から思っていた。
「お前らはここで暮らしたいならそれでいいと思う。でも俺はこういう機会だからこそ世界を旅したい」
「ユキ…。わざわざ身を危険にさらすようなことはしなくていいんじゃねぇの?世界を旅するって思っているよりも大変だと思うぞ。お前の父さんは有名な剣士だそうだが、だからと言ってお前の腕がいいわけでもないだろう?」
レオの言葉に続けて、サクラが言う。
「そうだよ。3人でこの街には住めないの?ずっと一緒だったのにばらばらになるのは嫌だよ」
沈黙が場を制する。先に沈黙を破ったのはユキだった。
「まだ時間もあるし少し街の様子でも見ながら考えるよ」そう言ってユキは部屋を後にした。

どうすればレオたちを説得できるだろうか。
ユキはそう考えてながら、人で混雑する商店街の中をあてもなく歩いていた。
どんっ!
誰かとぶつかったみたいだ。
「おおっと!ごめんごめん」
ユキはぶつかった相手を見る。
どこにでもいそうな普通の少年だった。
「僕こそごめんね。よそ見してたんだ」
「今度から気をつけろよ」
ユキはそう言って少年の頭をくしゃくしゃとなでた。
「うん!」
少年は走っていく。
そしてまた人にぶつかった。
あいつ、気をつけろって言ったのにまたぶつかってやがる。
訝しげに思ったが気にしないことにした。

しばらく歩いていると、前方に大男2人組とそれに絡まれてるように見える少女がいる。さっき少年がぶつかっていた少女であった。
横を通り過ぎる時に、少し会話を聞く。
「さっきは弟が世話になったな」
どす黒いような感じの低い声だ。
「何の話でしょうか」
応答する声は清らかでよく通る声である。
「とぼけるのもいい加減にしろや!ここじゃ話しづらいからちょっと裏に来てもらおうか」
そう言って大男は少女を無理に裏路地に連れていく。
あれはまずいんじゃないか…助けないと!
ユキは大男たちに気付かれないように後を追った。


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