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刃に心
【コメディ 恋愛小説】

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刃に心《第20話・戦、終わりて…》-4

「ん?」

振り向いたその先には、刃梛枷。氷だけとなったグラスを片手に佇んでいる。

「……お疲れ様…」

小さな声で刃梛枷が言った。

「お疲れ様」

疾風も笑ってそう返した。

「入れようか?ついでだから」
「……ありがとう…」
「何がいい?」
「……烏龍茶…」
「了解」

刃梛枷からグラスを受け取ると烏龍茶のボタンを押した。

「ありがとう。今年は助かったよ。去年は俺一人だったからさ」
「……どういたしまして…」

疾風は烏龍茶の注がれたグラスを刃梛枷に差し出す。刃梛枷はそれを両手で受け取った。
刃梛枷の指先が疾風の手に触れる。

「………ぁ……」

思わずか細い、吹けば飛んでしまいそうな声が漏れる。
幸い、疾風がそれに気付いた様子は無いが、受け取ろうとして動作が止まった刃梛枷を不思議そうに見ている。
刃梛枷はすぐに僅かに開いた口を閉ざすと、いつもと変わらぬ顔でグラスを受け取った。

「何だ、二人共此所にいたのか。丁度良い」

見れば、武義も飲み物を取りに来ていたようだ。

「報酬はどうするか聞きたかったんだ。
あまり高い金額は出せないが、俺に出来る範囲でなら何でも言ってくれ。
疾風は去年みたいに好きなもん奢るでいいよな?」
「それで構わないよ」
「黒鵺はどうする?」

そう問われて刃梛枷はじっと虚空を見つめた。
やがて、その感情の映らない瞳が武義の上着のポケットから出ているデジタルカメラに留まる。
体育祭優勝の喜びを写真に残そうと武義が持ってきたものだった。

「……それ…」
「これか?」

武義もそれに気付き、カメラを取り出す。

「……写真………撮って欲しい…」
「本当に写真撮るだけでいいの?」

疾風が尋ねた。刃梛枷はコクリと頷く。

「じゃあ、俺は先に戻ってるよ」
「……待って…」

部屋に戻ろうとした疾風を刃梛枷が呼び止める。

「……貴方も一緒に…」
「俺も?」

疾風は驚いた様子で聞き返した。写真を撮られるのは別に嫌いではないが、流石に女子とツーショットは気恥ずかしい。
困ったように武義に視線を向けたが、武義は無言で隣りに並べと示す。

「じゃあ、お言葉に甘えて」

疾風は刃梛枷の隣りに少し距離を空けて並んだ。


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