幕末の恋-1
時は、江戸幕府末期・・・幕末の動乱の中で、中心的な役割を果たしてきた志士、坂本竜馬は、動乱に巻き込まれ深い傷を負った・・・
そして、竜馬はその新妻、おりょうと共に、その傷を癒すため、湯治の旅に出た。目的地は、薩摩藩のある秘湯である。西郷隆盛が気を利かせて、そこに行くまでの地図と、関所の通交証と、近くの宿場の人への手紙とを添えてくれた。
その旅は二人にとって初めての旅で、動乱の世の中とは思えぬほどのどかな旅であった。
飛脚や早馬、船などを使って薩摩へ向かったがその間二人はずっと寄り添っていた。日本中を飛び回る竜馬が、こうしておりょうと一緒に旅を出来るのはこれで最初で最後・・・二人とも口にはしなかったが、分かっていたからだ。
薩摩の地へ降り立ってからは、地図を頼りにして、二人で手をつないで歩き、目的の温泉へとたどり着いた。切り立った岩の中に、こんこんと熱めのお湯が沸いていて、辺りの森は湯煙で包まれている。
「おぉ、やっと着いたのう、おりょう・・・」
「えぇ、竜馬様・・・その傷、しっかり癒しましょうね。」
「分かっちょる、ほりゃ、おりょうも脱がんと。」
そう言いながら竜馬は袴を脱ぎ捨て、その上に象徴である朱鞘の大刀を置いた。北辰一刀流の使い手であり、その恵まれた長身には一点のたるみもない。そして、左の肩口からみぞおちにかけて、まだふさがっていない生々しい刀傷。
さっさと裸になった竜馬はおりょうを待たずに湯船の中に体をすすめていった。真ん中ほどで立ち止まり、そのまま周囲の景色に見とれている。竜馬の背中にはその名の由来となった毛が、首から背中の真ん中あたりまで背骨にそって首から生えている。おりょうは、その背中にしばしみとれていたが、やがて意を決して着物の帯をとき、脱ぎ始めた。
衣擦れの音にひかれて竜馬がふりむく。小さいが美しい形をした両の乳房、細い肩、更に細い腰のくびれ、ほのかな陰影をたたえた下腹部・・・竜馬とは対照的な、華奢で美しい裸身が湯煙の中にあらわになっていく。
竜馬は目を細め、自分の妻の体を眺め、つぶやく。
「美しか・・・」
「竜馬様・・・」
おりょうは顔を赤らめながら、湯船の中にすすんでいき、竜馬と向かい合った。湯船の中心で二人は抱き合う。一尺ほども身の丈の違う二人なので、おりょうの頭は竜馬の胸にすっぽりと包まれる。
「竜馬様、おりょうは、おりょうは・・・竜馬様をお慕い申し上げております。私を、抱いてくださいませ・・・」
「おりょう・・・」
竜馬はひざを屈めておりょうと唇を重ねる。やがて優しくその舌が絡まり、おりょうは愛する人の唇の心地よさにまつげを震わせてしまう。背中にまわしたおりょうの手にも力が入る。
竜馬は、片手でおりょうを抱きながら、一方の手を背中から下に滑らせていく。手が丸い尻をとらえ、少し力を入れてそれをつかんだ。