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淋しい嘘
〜私は誰も愛さない〜
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淋しい嘘
〜私は誰も愛さない〜
-3

「お母さん、お母さん、ちょっといい?」
>あの子がお母さんと呼ぶなんて…悪い話らしい。「いいわよ、界ちゃん」
「あたしのお父さんって、誰」
「あーあ、なーんだ、そんなこと。佐東 洋っていうのよ。カッコイイし、優しいし、賢いのよ。私の大切な人。やっぱり、どうしても忘れられない人」
「ほんとう、本当なの?私の父親、その人なの?」
「・・・・・・・・・もちろん」
お母さんの顔が青くなっている。嫌な事なの?あたしの方が青ざめてきそう。
気になるのに、今は問い詰めてまで聞く勇気はない。ママが辛いなら、なんか、もういいよって思う。
そうだ、話題を変えよう。
「ちょっと聞いてみたかっただけ。えっと、そういえば、あたしの名前ってどうやって決めたの?」
話題が変わった。急に。ああ。あの時。表情に出てなかったかしら。
「かいって名前にすることは、付き合いだしてすぐの時かな、パパの子供を想像した時から決めていたのよ。パパの洋って名前は広い海を連想させて、私は大好きだったのよ。かいって素敵でしょう。パパにちなんだ名前として、かいにしたのよ。海の系統としては海のかい、貝殻のかいがあるし、その他では開閉の開く のかい、絵画のかいとか色々あったな。そのなかで、世界のかいにしたのよ。若くして天国へ旅立ったパパよりも、もっともっと広くて大きな世界で生きて欲しいから」

「ありがと。ママ… あたし、もおいいや」
界は部屋に戻った。

星編
本当は、洋君にちなんだ海の海をつけるのが恐かっただけ。私達の子供は、海のカイだったのよ。最後に言った言葉は前々から聞かれた時用に考えていた嘘。
でも、この子は嘘を額面通りに信じたようだ。それにしても、何故今急にこんなこと聞くのかしら。学校で何か起きたの。気になる、疑問は調査しなくては。
行かないつもりだった明日の授業参観…やっぱり有休取って行こうと思った。勿論、私の為に。
否、もしかするとあの子の為にも。

カイラ編
あたしは、誰の子なの。誰か、答えて。
昔っからそう思っていた。
あたしは、誰にも似てない、と…

星編
さて、昨日あの後に電話したらすんなりと休暇が取れた。部長のおかげだろう。憐れみから来ている優しさ…同情だって構わないわよ、特に私の為になることなら。
はあ、学校なんて行きたくなかった。大好きな洋君と昔一緒だったからかな。あの頃のことを思い出してしまう。洋君・洋君・洋君…
あ、もうすぐ教室ね。ここ、ここだ。

「はーい、日直さんー号令!」
「起立、礼、着席」
「はい、これから国語の授業を始めますよ。教科書の304ページを開いて。今日はええと、シバ君から読んでね」
「トロッコ、芥川龍之介…」

え、え、あれ?シバ君てあの子にそっくり。まさか、それであんなことを聞いたのかしら。
でも、きっと大丈夫よ。そんなこと、知る由(よし)もないことだし。私も違う、ただの別人だって思う。
でも気分が悪い。もう帰ろう。
私はその後すぐに教室を出た。

何が起きたの..
心の奥にずっと閉まって、実際には閉まいたかったことである。
声が出なかった、ただただ、逃げたかった。
思わず、口から、勝手に呟きが出た。「もう、忘れさせて。お願い」

その時、星は人に出くわしていた。星より少しふけた感じの男の人である。星は、今にも卒倒しそうである。

その時、男は女に出くわしていた。まだ若く、妹か弟の授業参観にでも来ているのだろうか。なかなかの綺麗な顔をしている。いい線だ。この女が欲しい。


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