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「宇受賣神社の巫女」
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「宇受賣神社の巫女」-15

 出発の時間がきた。最後に一目、那美に会いたかったが、神楽の後、彼女が太野の前に現れることは、ついになかった。
 美沙子とともに神社の境内をゆっくり歩く。今日は写真もメモも取らなかった。学位論文に、この神社での経験を書くことはないかもしれない。それでも、きっと生涯忘れることはないだろう。
 車に乗り込む間際、太野は、昨夜からずっと気になっていたことを、勇気を奮い起こして尋ねた。
「昨夜の神楽で、僕は彼女を抱きました。そして…、その…、もし彼女が妊娠したら…」
「子供ができることはあります。」
 美沙子は当然のことのように言った。
「男の子が生まれれば、この村の子として育てます。全員が私と同じ稗田の姓を名乗り、長じて囃子方や神楽の舞い手になったり、神社の運営に携わって、巫女に仕えることになります。私の父もそんな男の一人でした。」
 美沙子の父が亡くなっていることは、電話で見学を申し入れた時に聞いていた。それ以来、世俗的な意味での神社経営は、彼女が責任を負っている。
「もし、女の子が生まれれば…」
 美沙子は話を続けた。
「稗田の一族の者を里親として選び、村を離れて育てさせます。そして、その子が16歳になった時、巫女にふさわしいご器量をお持ちかどうかを拝見いたします。」
 そう言いながら美沙子は、昨年、那美を迎えに行った時のことを思い出した。
「ご器量が及ばないのであれば、その子は、この村のことも神社のことも知らずに暮らすことになります。しかし、もしご器量がおありなら、その御子が次の巫女になられます。」
 美沙子はそう説明して、ニッコリと笑った。
「ひょっとしたら、昨夜の先生のお種から、次の猿女の巫女がお生まれになるかもしれませんね。」


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