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卒業の季節に
【青春 恋愛小説】

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卒業の季節に-2

『じゃあHR終わるから。気をつけて帰りなよー。あと羽目外さないようにね。じゃあまた合格発表後ね!』
終わったらしい。
さっちゃんが、とびきりの笑顔で私の方を向いた。
『帰ろっか。』
泣きそうな私を見て、頭を撫でてくれた。
『ちゃんと、お別れ言わなきゃだめだよ。』
さっちゃんの言葉にうなずくので精一杯だった。


通い慣れた校門をくぐり学校の外に出る。
ふと後ろを振り返ってみた。
校門の内側で、彼が手を振っていた。
外に出てしまった私と、内側にいる彼との間に、埋めることのできない隔たりを感じた。
『卒業、おめでとう‥』
春の風に乗って流れてきた彼の声は、私だけに向けられた物ではなかったに違いない。
けれど、私には。
甘く囁くように聞こえた。
胸を締め付けるような、彼の声だけが聞こえた。

『さよなら。』
呟くように言った私の声は、彼に届いたかわからない。
けれど私は、彼に別れを告げた。
空が霞を被ったように滲んだ日。
忘れもしない3月1日。
私は卒業しました。
3年間休まず通った、思い出の溢れる高校から。
そしてあなたから。
最後の一瞬。
瞳を交わしたあなたを、大好きでした。
一度も言葉にすることはなかったけれど。
そしてこれからも、私の言葉があなたに届くことはないけれど。
あなたからもらった『おめでとう』を忘れることはありません。
あの日から、幾年の歳月が流れようと。
卒業の季節が巡ってくる度に。
あなたの言葉を思い出すのです。
そして繰り返します。
今でも胸を締め付ける、あなたからもらった『卒業、おめでとう』を。
毎年のように‥


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