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僕とお姉様
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僕とお姉様〜お姉様の恋〜-3

「強君、お姉さんと喧嘩したの?」
「や、してないけど…何で?」
「元気無いから」
「別に普通だし、あの人と喧嘩したところで凹む理由にはならないよ」

自分のセリフに本心がビックリしている。
嘘つくなって聞こえそうで必要以上に音をたてて白菜を切った。

「ひばりちゃんもせっかく新婚なのに、俺みたいなデカい息子と知らないお姉さんが一緒じゃ嫌でしょ」
「全然」
「へ」

意外な即答に声が裏返る。そんな事は気にせずひばりちゃんは話し続けた。

「あたし強君をずっとお兄ちゃんみたいに思ってたから一緒に暮らすのに違和感を感じた事なかったよ。あ、強君からしたら違和感あったかもしれないけどっ」

勿論違和感だらけだよ、色んな意味で。

「それにあたしあのお姉さん好きよ」
「マジで?鍋しか作らないじゃん」
「献立は関係ないよ。なんていうか雰囲気が好きなの。上手く言えないけど、解毒剤みたいな中和剤みたいな」
「解毒って…」
「だって、父親が突然再婚したら普通もっと怒ると思うの。あたしみたいな子供が相手じゃ尚更。結婚した日すぐ強君が飛び出して行ったから、もう帰って来ないんじゃないかってすごく不安だった。でもお姉さんと一緒に帰って来てくれて、この前の事も、お姉さんがメールくれなかったら今頃こんな風に強君と会話できてなかったと思う」
「…」

僕は怒ってたよ。帰りたくないと真剣に思った。
その考えを曲げてくれたのは、君が一生知り得ない僕の気持ちをあの人が聞いて受け止めてくれたから。
普段クール気取って滅多に表に出さない僕の喜怒哀楽をあの人が全部掬い上げてくれるから、僕はあの人といるのがすごく楽ちんだった。
あの日あそこで元彼に会わなければ、今ここでキムチ鍋を作っているのは僕とお姉様だったのに。

「ひばりちゃんはいつから父さんを好きだった?」
「えっ?いつからだろ、もうずっと前…、昔すぎて忘れちゃった」

少し頬を染めて笑う君の横顔を見ても、僕は傷つかなかった。
これが、今の僕の気持ち?
何てこった。
一緒に育って生年月日から血液型まで何でも知ってるひばりちゃんより、寄りによって知り合ったばかりの下の名前しか知らないような人に僕は惹かれてしまったのだ。



人ってきっかけ一つで気持ちを変えれるものなんだな。
だけど気付いた事は後悔している。
あの人は今、元彼と会っているのだから。
部屋に置きっ放しだった携帯を見ると着信とメール受信があった。どっちもお姉様からで、話し合いの結果を聞きたくなくて電話は勿論メールも読まずに消去した。
夜になっても戻らないのが何よりの答えだ。
そう確信していた。
だから夜中に僕を起こした小さな物音の原因が帰ってきたお姉様だと分かった時、本当に本当に驚いた。

「ごめん、起こした?」
「や、…何で帰って来たの?」
「駄目なの?」
「だって、元彼と話したんじゃ…」
「うん、話したよ。その後友達とカラオケ行くってメールしたじゃん」
「…あ」
「読んでないの?」

読んでないよ!てっきり、もう戻らないって言われるんだと思ってたから。

「そうだ、これ見て」

のそのそと布団から這い出る僕に、お姉様がカバンから出して見せたのは以前元彼の部屋に置いてきたはずの現金入り封筒。


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