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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『SWING UP!!』(第1話〜第6話)-54

 しかし、ある時、二人はようやく繋がった。そのきっかけは……哀しい出来事だった。
 退院していたはずの彼女の弟が、急逝したのである。
 もともと心臓に持病を抱えていたらしいのだが、それが完治にも似た落ち着きを見せたので、退院と帰宅を病院側から許可され、その後も、定期通院と薬の服用によって発作は完全に抑えられていた。そのために、家族の誰もが“もう、この子は大丈夫”と、気を緩めてしまったのだろう。
 ひとり留守番をしていたとき、急激な心臓発作に襲われた彼は、薬を服用することもできず、助けを呼ぶこともできないまま、逝ってしまったのだ。たったひとりで死を迎えたその心細さは、いかばかりだったか…。
『私が、あの子を死なせたの! 私が、あの子を…!!』
 家族の誰もが、自分自身を責めた。その中でも葵は、深く自分を傷つけた。そう、文字通り“傷つけた”のである。
 自分の腕をカッターで切りつけて、小さな十字傷をいくつも刻みつけた。まるで、ひとりきりで逝かせてしまった弟に対する、鎮魂のように。
 事情を訊き、大和はすぐに彼女を訪ねた。ほんとうならば、間を置くべきだったのだろうが、どうにも嫌な予感が拭えずに、彼女の家に足が向いてしまったのだ。
 出迎えてくれた葵は、その美しさがすっかり色褪せ、生気のかけらも見ることができなかった。そんな彼女を見ていられなくなった大和は、かつて自分が救われたように、必死に彼女を宥め、そして、慰めた。
 “腕を傷つける行為”は、床におちていたカッターナイフの刃が異様に黒ずんでいたことで気がついた。
 これに対しては、大和も言葉をきつくして彼女を叱った。しかし、彼女の中にある悲しみの深さを知り、元気だった頃の弟の姿を思い出して、終いには大和のほうが嗚咽を堪えることができなくなってしまった。葵が自ら傷つけたいくつもの十字は、それがそのまま彼女の心に背負ったものと等しいように思えて、あまりにも哀しかったのだ。
 どちらかといえば感情を露わにせず、ポーカーフェイスな部分が強いと思われている大和だが、その内に秘めた激情は計り知れないところもある。それが、葵の悲しみに触れたことで、堰を切ったように溢れ出してしまったのだろう。
『泣かないで……ね……わたしも、泣くのやめるから……ね?』
 抱き合いながら、泣き続けた。そうして互いの温もりに癒されながら、冷えてしまった心を暖めあうように、二人は初めて体を重ねあったのである。
 哀しく、切ない契りではあった。しかし、それは同時に、生命の暖かさを悟ることのできた尊いひとときでもあった…。


「ね、大和君……気持ちいい……?」
 一線を越えれば、抑えていた欲望は果てがない。
 接合のときのめくるめく快楽は若い二人をたちまち虜にして、時間があれば逢瀬を重ねて、蜜に濡れた時を過ごすようになった。
「ん、んちゅ……ん、んむ、んむ……」
 彼女の父親が仕事の都合で家を空けると、それを待ちかねていたように二人は若い肉体を曝け出しあって、欲望に姿を変えた情愛をぶつけ合う。
「はぁ、はぁ……あ、あむ……」
 今もまた、限られたその時間の中で、葵は大和の陰茎に奉仕を施していた。
「くっ……」
 小さく蠢く舌使いに、敏感になっている剥き出しの業が大和を身じろぎさせる。それを上目遣いに見つめてくる葵の瞳は、妖艶な光を帯びていた。
「すごいね……固くなって……」
 陰茎の根元を、指でいとおしげに優しく握る。絶妙な力加減で圧迫を加えられた大和の淫棒は、その先端を激しく震わせて、中に宿している官能をダイレクトに葵の掌に伝えてきた。


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