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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『SWING UP!!』(第1話〜第6話)-275

「大和君……」
 その想いを受け止めて、桜子も彼の身体に腕を廻した。熱帯夜の始まりを思わせる熱気も構わず、強くその身を抱き合っていた。
 最後にもう一度、軽い口づけを交わしてから、ようやく二人は絡み合っていた身体を解いた。なにしろ桜子のお腹から響いてくる重低音は、止むことを知らずに鳴り続けている。彼女は開き直ったようにぐうぐうとそれを鳴らしているが、隠している恥ずかしさは最高潮だろう。
「晩御飯さ、豪華に行こうよ。バイト代も入ったから」
「いいの?」
「さっきから暴れっぱなしのきみのお腹を、なだめてあげなきゃ」
「も、もう……いわないでよ……」
 お願いだから、触れて欲しくないところだ。キスの真っ最中に腹の虫を鳴らしたことは、女の子にとって一世一代の不覚と言わずに何と言う。

 ぐきゅるっ、ぐきゅるるるるっっ

「ほら、ね」
「あぅ……いじわる……」
 そんな桜子をあざ笑うように、またしても盛大に鳴る腹の虫。今度笑ってしまうと、彼女は本気で泣いてしまうだろうから、可笑しさを必死に堪えながら、大和はその手を取ってベンチから腰を上げた。
 しんみりした雰囲気があっても、最後には陽気な気分にさせてくれるのが、桜子の魅力である。何かあるとは顔を出しかける大和の“陰”は、いつも彼女のおかげで払われて、笑顔をくれるのだ。
 笑顔でいられること…。それは、人として何より幸せなことである。
「行こう」
「うんっ」
 ネオンの煌きに誘われるように、二人は繁華街の方へと歩みだした。汗ばむ熱気にも構わず、その手を強く繋いたまま…。
 まずは、その手の情報に疎い大和でも場所を知っている“値は若干張るが、その分、味は極上”と有名な高級洋食店“五ツ星”に向かった。桜子の腹の虫を宥めるには、もってこいの場所だ。ちなみに、財布の中には諭吉先生が3名いらっしゃる。今日は、宵越しの金を持たないつもりだった。
「………」
 その勘定の中には、食事を済ませた後で桜子を誘う、“御休憩用のホテル代”も含まれていた。


「あ、あの……大和君……ここって……」
 “五ツ星”で豪華な食事を済ませ、しばらく街中を並んで歩いていたのだが、気が付けば“御休憩用”のホテルが並ぶ通りに入り込んでいた。言うまでもなく、そう誘導してきたのは大和の意思である。少しばかり時間をかけて遠回りをしたのは、性感が鈍るという“満腹状態”を解消するためであり、その辺りの配慮にぬかりはない。
 その中のひとつ、“LOVE&PEACH”という看板が立つホテルの前に、二人は立っていた。ちなみにホテルの名前は、オーナーが無類の慈善家であることから、“PEACE(平和)”と書くつもりが、何処でどう間違ったのか“PEACH(桃)”になってしまったらしい。ホテルの売上は、その数十パーセントがAAA(Act Against AIDS:後天性免疫不全症候群撲滅運動)基金へ当てられているという事も併せて、この界隈のトリビア知識になっていた。
 …それは、ともかく。
「………」
 沈黙の中で、強く手が握り締められた。

『行こう』

 と、言う、揺るぎのない意志が、その視線にも込められていた。
「いい…よ……」
 ほんのわずかなためらいの後、顔を真っ赤にして俯きながら桜子は頷いた。 中に入れば二人ですることはもう分かっているから、恥ずかしさと共に甘い期待が、彼女の関心と官能をそれぞれにくすぐっていた。
「う…わ……ぁ…」
 いわゆる“ラブホテル”に入るのが初めてなのだ。一般の旅館やホテルとは全く違う内装のお出迎えに、桜子は目がチカチカしてしまう。


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