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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『SWING UP!!』(第1話〜第6話)-199

「小学生……じゃないな」
 自分たちと体格が同じくらいの団体が、エレナの後ろに従っている。この時点で、“小学生”の選択肢は消えた。
「よし、みんな整列だ」
「おうっ!」
 すぐに雄太が皆をまとめ、整列した状態を作り相手を待った。春先にはなかった団体行動の機敏さは、このチームのまとまりが熟練してきたことの証でもある。
「おはようございます!」
 雄太がチームを代表して一歩前に進み、威勢の良い声で挨拶をする。
「おう、雄太。ええ気合や。チームの頭を張るもモンは、そうでないといかんわなぁ」
「へっ?」
 相手の顔もよく確認しないまま皆を整列させて頭を下げたのだが、親しげにかけられた声は良く聞いたものであった。
「りゅ、龍兄!?」
「よっ、おはようさん」
 人懐っこい笑顔に白い歯を見せているのは、そのユニフォーム姿を久しく見ていなかった蓬莱龍介である。彼が、ある草野球チームの頭を張っているのは、当然ながら雄太も知っている。
「じゃ、じゃあ……今日の試合の相手って……」
「おう! ワイら、“ドラフターズ”や!」
 そういって太っ腹を誇示して見せる龍介。胸を張ったつもりらしい。
(やっぱり)
 その仕草に軽く吹いた桜子。自分の予測があっていたことも、苦笑の一因であった。
(お姉ちゃん、ユニフォーム綺麗に畳んでたんだもん)
 今日の相手が、義兄・龍介の率いる草野球チーム“ドラフターズ”であること…。 それを知っていたのは、昨夜、由梨が龍介のユニフォームと道具一式を丹念に用意していたのを見たからである。
 草野球の大会があるとは聞いていなかったので、近いうちに試合があるとしたら、それは自分たちとの練習試合以外には考えられなかった。それに、エレナの頼みとあれば、一も二もなく龍介は引き受けるはずだ。
「胸を貸したるワイ! 雄太、覚悟せえよ!」
「赤木……。助っ人を頼んどいて、“胸を貸す”も何もないと思うけど」
 龍介の隣にいるのは、相棒の新村である。残念ながら、龍介にとってのもうひとりの相棒・原田は、都合がどうしてもつかずに今回は参加ができなかったそうだ。
「……? あれ?」
 ふと桜子は、チームの中にいるべき人がいないことに気付いた。
「京子さんは?」
 ドラフターズの大黒柱は、何と言ってもエースの京子である。ところが、その京子の姿が何処にも見当たらない。
「京子ちゃんはね、ちょっと事情があって来られなかったんだ」
 桜子の疑問に応えたのは、新村であった。その右手が、さりげなく龍介の口をふさいでいたのに、桜子は気がつかなかった。
「そういうわけで、私が代役」
「あっ、晶さん!」
 居並ぶチームメイトの中から、ようやくという具合に姿を現した晶。もったいぶった登場は、“助っ人”になりきった自分を演出しているのだろうか。
「助っ人って、晶さんなんだ」
「まあね。でも、もう一人いるわ。それも“スペシャル”な人がね」
「もう一人? すぺしゃる? あっ!」
「やあ、桜子ちゃん」
「亮さん!」
 思いがけない人物が目の前に立った。桜子が“亮さん”と名前を呼び、胸には“木戸”と書かれたユニフォームを身に付けているから、彼はその姓名を“木戸 亮”という。
 ご存知の通り、彼は晶の夫であると共に、蓬莱亭のお得意さまでもある。もっと言うなれば、城南中学の教師にして、野球部の監督でもあり、また、国体では今も出身県の選抜代表選手に選ばれるほどの選手であった。


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