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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『SWING UP!!』(第1話〜第6話)-177

 あれだけの浅ましい声。それを、最近は聞いていない。
(………)
 抑えようとしても、腹立たしさは膨れ上がるばかりである。桜子の肌が、無性に恋しくなってきた。
 紛れもない男のエゴに、大和は陥っていた。自慰で己の性欲を存分に解消した桜子を、責めたい気持ちになっているのだ。
(バカなことを……)
 冷静な思考を持ち続けるもう一人の自分。それを押しのけて、エゴは肥大の一途を辿る。
 桜子の肌と身体に対する獰猛な欲求…。冷静さを取り戻そうとする自己…。
 その葛藤に悶々としながら、大和は足取り重く部室を後にしたのであった。


「やっほ、こんちは」
「あっ、京子さん」
 夕方からの開店を前に、京子が飲料類の配達にやってきた。
「荷降し、手伝います」
「ありがと〜。今日は多いのよねぇ」
 水を撒き、床のブラッシングをしていた桜子はその手を止め、荷降ろしの手伝いをするために外に出た。
「わあ、本当に多いですね」
「でしょ」
 ビールの消費量が多くなる夏場だけに、大衆食堂であるはずの蓬莱亭でもその補充量は増える。普段なら、駐車場のない蓬莱亭への配達では、小回りが利く愛用のオートバイを使用する京子なのだが、今回は二輪では不可能な量だったので、ワゴン車で“どんっ”と店の前に乗り付けていた。
「大将、注文どおりケースで五つ、ピッチで三つ持って来たよ」
「おおきに、お京はん」
 厨房の奥で仕込みのチェックをしていた龍介。京子の声に反応するように、屈んでいた身を起こしてその丸い顔を見せた。
「暑かったやろ。茶でも飲んで、一服していってや」
「いいの?」
「遠慮せんといてぇな。桜子ちゃん、用意したって」
「うん!」
 桜子は水場で両手を濯ぎ、お茶の用意を始めた。用意、といっても、家庭用の冷蔵庫に冷やしてある麦茶入りの水差しを取り出して、冷えたコップに注ぐだけなのだが。
「はい、京子さん」
「ありがとぉ」
 それを受け取るや、京子はそれを一気に呷った。もちろん、片方の手はしっかりと腰に置かれている。それが、粋の良い飲み方だと断言しよう。
「ぷはぁっ。おいしいわぁ」
「ご、豪快だね……」
「今日は、いつもより力仕事が多かったからね」
 瓶ビールの入ったケースを、運んでは積み、積んでは降ろし、降ろしては運んでと、蓬莱亭以外の店でもそれを繰り返していたのだ。重労働このうえない。それでも弱音を吐かず、伯父夫妻の手も借りず、ひとりできびきびと彼女はこなして見せたのだから、その根性は並ではない。
「お京はん。これ、今回の支払い分や」
「あらぁん、ありがとう。今、領収書を出すからね」
 龍介は、京子の店への支払いは、現金即払いと決めていた。仕入れの量や売上の数字と言う意味では、蓬莱亭以上のお得意様もあるが、即金で支払ってくれるのはここだけである。それほど規模の多くない酒屋の経営者としては、卸した商品がすぐに現金となるのは、とてもありがたい話である。
「これで、配達は終わり…っと」
 メモ帳になにやら書き込みをしてから、京子はカウンターの椅子に改めて腰をおろした。
「今年の夏は、ほんと暑いわよねえ。あの子たちも、よくがんばってるわ」
 蓬莱亭に備え付けてあるテレビからは、夏の風物詩といっても良い金属バットの響きと、沸きあがる歓声が聞こえてくる。画面の向こうで熱戦を繰り広げている高校球児たちに思いを馳せる京子であった。


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