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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『SWING UP!!』(第1話〜第6話)-143

 興薬大|000|000|000| 0|
 双葉大|241|604|20X|19|

「ゲームセット!」
 ブロック戦の第2試合目。興栄薬科大学との試合もまた、双葉大学の圧勝で終わった。確かに相手は、2部リーグの中でも力の見劣りするチームではあるが、慢心することも無くそれを退けた。
 今日の殊勲は、なんと言っても桜子であろう。初回の2点二塁打を皮切りに、2回の満塁本塁打、4回の走者一掃の二塁打に、極めつけが6回のスリーランアーチ。
 相手の投手が緩急に長けていなかったとはいえ、6安打12打点という数字は彼女のパワーヒッターとしての実力を物語っている。
「サクラ、とってもイキイキしていますね。腰の回転も、とってもとってもよろしいです」
 晶の率いる城南エスペランスとの試合のときとは、明らかに桜子のスイングの質が変わっている。これまでは腕の力だけで振り回すようにしていた状態がある程度まで是正され、強い足の踏み込みが膝のタメを十分に受け、鋭い腰の回転で加わった遠心力がそのままバットに乗っているのだ。その怪力を充分に生かせるようになれば、その打撃力は計り知れないものになる。実際の話、ブロック戦が開始してからの彼女の活躍は、エレナの想像以上であった。
(クサナギさんは、敬遠されますからね)
 今日の試合、4番に座る大和はなんと全打席を敬遠された。先の試合での神がかりな活躍に、相手が怯えたのだろう。捕手が立ち上がっての敬遠ではなかったが、外一辺倒の配球はしかし、ストライクを一度もコールさせることなく大和を塁上へ進めるばかりだった。
 それでも、大和の凄みと言うのは、勝負を避けられている状況を冷静に受け止め、四球を選び続けたことである。強打者の矜持があるのなら、相手の露骨な敬遠策になんらかの難色を顔にしそうなものだが、それがない。
 四球は安打と等しいものである。それで出塁した大和を、桜子の一撃で得点につなげていく。岡崎や雄太のバッティングも好調で、たとえ大和だけを警戒していても、双葉大の厚みが増した打撃陣は、間違いなく相手投手を絡めとり大量点を奪った。
 これで2勝を挙げ、勝ち点を6にした双葉大学は、早々と決勝トーナメントへの進出を決めた。次に対戦する國文館大学も既に2勝しており、その結果がどのようなものになろうと下位の2チームは勝ち点で届かない。國文館大との試合は、トーナメント戦で互いにどちらの山に入るかを決める一戦ということになる。
「それにしても、草薙と蓬莱はすげえな」
 試合を終え、ベンチで荷物を纏めている若狭が栄村に呟くように言っていた。
「蓬莱は、ほら、バレーボールで活躍していただろ? 高校生で全日本に入ったくらいだから運動は何でもお手の物なんだよ」
「まあ、それはわかる。……草薙は?」
「う〜ん……」
 この二人も、“甲子園の恋人”だった大和の過去を知らない。その名称は知っているが、ほとんど雲上の存在だったものが、まさか自分たちのチームにいるとは思いもせず、また、その時とは大和の名字が異なっていることも大きく影響していた。
 今現在、チームの中で彼の過去を知っているのは、桜子と岡崎だけである。
 桜子は、甲子園で活躍していた彼のことを話そうとした時、大和にそれを留められているから、自分から口に出すことはしないと心に決めている。
 岡崎は、大和と甲子園で対戦した過去を持っているので記憶の中の存在と彼とがすぐに一致した。それを公にしていないのは、名字が変わっている大和の事情を察してのことである。本人から確認されるまでもなく、岡崎はその辺りの配慮を既に心得ていた。
 若狭と栄村は、しかし、大和の過去について頓着はしていない。ただ、後輩の二人に凄まじい実力を見せられることで、先輩としての矜持を刺激されているのは確かだ。


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