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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『SWING UP!!』(第1話〜第6話)-131

「ボール!」
 四球目まで、一度もバットを振ろうとはしなかった。
『サカエムラさんは、とても落ち着いた野球をするひとです』
 故にエレナは、彼の慎重な姿勢と選球眼の良さに注目し、様々なケースでの打撃を必要とされる2番の方が適していると判断した。
「ボール! フォアボール!」
 エレナの眼力に応えるように、栄村は一度のスイングをすることもなく、しかし塁を奪い取った。地味ではあるが、内容的にはヒットを放ったのと同じ結果を彼は得たのであり、
「OK! GOOD!!」
 そのため、エレナの賛辞は、栄村にも惜しみなく与えられていた。
「よっしゃ、行くぜ!」
 無死一・二塁と言うまたとない好機を得た双葉大学。その3番打者は、雄太である。バットをぶんぶんと振り回しながら、彼は意気揚揚と左打席に入った。
『キャプテンさんは勢いに乗るのが上手なひとです。それに、とても柔らかなバッティングをします』
 クリーンアップの一角である3番打者は、好機に萎縮しない精神も必要とされる一方で、続く4番、5番にその好機を繋げていく役割も持っている。力強さと器用さを同時に有したバッティングが期待される位置だ。
「おらぁ!」
 エレナの言うように、雄太は勢いに乗りやすい。また、恰幅が割といい体格だが、その関節や筋肉は柔軟で、それがバネの強さに変わり、鋭いバットスイングと優れたバットコントロールを一振りの中に凝縮させていた。

 キィン!

「おぉ!」
 勢いのままに初球から積極果敢に打ちに出た雄太。彼のスイングが捕らえたボールは右中間の真ん中を破り、それを確認した岡崎と栄村が、相次いでホームに還ってきた。
「VERY NICE!」
 エレナの歓喜に乗る形で、双葉大学のベンチは更に湧く。“強豪”の一角を担う関八州大学から、早くも2点を先制した。
 そんな歓声の中で、落ち着いた様子のまま打席に向かう大和。新入生でありながら、彼はチームの“核”とも言うべき4番打者の座を託されていた。
『クサナギさんは、“STAR”を持っています』
 大和を4番に据えたエレナは、彼を評価するのに抽象的な表現を使った。
 4番と言うのは、実力を超えた“何か”を必要とされる。そしてそれは、言葉で上手く説明できるものではない。チャンスに打順が廻るのだから、“好機に強い”というのは当然のことではあるが、その存在が既に相手にとって脅威となるような“気格の強さ”も問われてくる。エレナはそれを端的に表すために“STAR”すなわち“星”という表現を使った。
 理屈で全てを説明できない神聖なる領域……それが、“4番打者”というものなのだ。
「………」
 大和が右打席に入り、構えを取った瞬間、グラウンドには静謐な雰囲気が下りた。それは、大和が発している威圧感に、関八州大学の野手陣が明らかな萎縮を見せているからである。“打たれそうだ”という悲観な想像が彼らの意識を支配したのであり、そういう雰囲気を背中に浴びるマウンドの投手はさぞかし足元が頼りないであろう。
 打席に入った時点で、相手の戦意を喪失させる。そんな凄まじい気迫を、大和は充分すぎるほどその体に宿しているのだ。童顔で、華奢にも見えるその体格からは想像もつかないほど、彼の中には強壮な気魂が備わっている。
 魅入られたように、力のないストレートが真ん中に入ってきた。
「!」
“静”から“動”へと、一気の連動を開始した大和のスイングは、空気を峻烈に切り裂く音を発しながら、棒球というべき相手投手の直球を弾き飛ばした。
「!!」
 ピンポン玉のようにボールが宙を舞う。それは青い空の中で、果てしなく高く雄飛を続け、グラウンドを遥かに超えた木立の更に向こうへ、勢いが衰える様子も見せないまま消えていった。


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