投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

『STRIKE!!』の最初へ 『STRIKE!!』 82 『STRIKE!!』 84 『STRIKE!!』の最後へ

『STRIKE!!』(全9話)-83

「おぉー!!」
 二階のロビーで沸くのは、男連中だ。大部屋にはテレビが備えつけてなかったので、放映中のナイター中継を見るために集まってきたのだ。
 中継は、東京ガイアンズと名古屋ドルフィンズの試合。そしていま、ガイアンズの主砲・松島が、ドルフィンズの活きの良い若手投手・安倉から2点本塁打を放ち、0−5と突き放している所だった。
 目を爛々と輝かせ、テレビに食いつく面々。その中には、亮の姿もある。バス酔いに苦しんでいた彼は、しばらく部屋で休んだことによりすっかり回復していた。
「どーよ、木戸。松島、これで2本だ」
 得意満面に言うのは、新村。彼は、ガイアンズの信望者だ。特に、同じ二塁手でもあるポジショニングの名手・菱選手を尊敬しているとのこと。
「今のはリードが甘いですよ」
「プロ相手に、お前も言うね」
 呆れたような長谷川の言葉。彼も、新村ほどではないがガイアンズのファンである。
「今の松島は、変化球でかわすよりも、むしろ速い球でインコースをついたほうが、見逃しかセカンドゴロで打ち取れるんですよ。あのリードは、強気な谷峰らしくない」
 その長谷川に力説する亮。どうやら、彼の贔屓はドルフィンズらしい。
「まあ、あのインベルカーブ(インコースの甘いところ、選手のベルトのあたりに入ってくるカーブ)じゃ松島じゃなくてもホームランだよな。確か、安倉って150はでるはずだろ? それなのに、もったいねえなぁ」
 長見もその場にいた。ちなみに彼は、瀬戸内カブスのファンである。途中経過で知ったのだが、対戦しているリクルト・イーグルスに大量リードを許しているため、敗戦濃厚なドルフィンズを応援する亮に同情的だった。
「そうだろ? そう思うよなあ、長見君……」
 ため息の亮。バス酔いで青い顔だったのは、もう過去の話らしい。
「セ・リーグはまだいいよ。放映されるからな」
 これは直樹の呟きだ。
「ロッツの試合なんて、一年に何回見られるか……」
 彼は千葉ロッツマリンブルーズを応援している。今季、開幕11連敗を喫したが、いまは何とか盛り返しているチームである。
「ロッツは、まだ黒本とか戸野とかミッチーとか藤浦とか……タイトルホルダーがいっぱいいるからいいじゃないですか」
 斉木が泣きそうに言う。
「オリンポスなんて、シチローはいないし田内はいないし……いま、4番を打ってるの和邇なんですよ? 年間10本、ホームラン打ったらいい方の和邇が!」
 神戸オリンポス。大リーグに人材が多数流出したため、若手の台頭が待たれる中、少ない戦力で苦戦を強いられているチームを、それでも愛している斉木である。
「まだ大リーグに選手を出しただけ、ましだと思うぞ」
 割って入ったのは上島。ちなみに彼は、札幌に本拠地を移転したフラッパーズを応援している。ニュースでさえ選手が動くところをなかなか見れないチームを、小学校の頃から応援している彼は偉い。
 野球談義になると、彼らは止まらない。
「なあ赤木……」
 原田は、将棋版を挟んで対峙する赤木に問い掛ける。一瞬、バスの中での事を思い出し、尻に危機を覚える赤木。
「今、風呂場は女の園だ」
 ぱち、と銀を王将の隣に寄せる。
「そ、そうやな……」
 ぱち、と飛車を相手陣地に寄せる。
「覘きに行こうと誰も考えないあたり、幸せだなうちのメンバーは」
 ぱち、と歩で出足を塞ぐ。
「そ、そうやな。………お、おまえはどうなんや」
 ぱち、とその歩を飛車で取る。一方で、尻の危機感が、ますます募っているのだが。
「俺は……」
 ぱち、とその飛車を桂馬で取る。
「お前といられれば、それでいいからな」
 ぼろ、と赤木の指から駒がこぼれた。



「ふふ、みんな、野球が好きらしいな」
 “いの間”でくつろぐ藤堂智子は、さきに風呂をいただいていたので、既に浴衣に身を包んでいた。時折聞こえてくるやり取りに耳を傾けると、思わず頬が緩んでしまう。
「いいんですか?」
 机を挟んで向かい合う浴衣姿の男が聞いた。手にしている銚子を、智子のお猪口に注ぐ。
「肴には、最高だ」
 聞こえる歓声も気にしない様子で、お猪口を口元に運ぶ。
「先生も、野球好きですもんね」
 男がはにかんだように笑った。髪を何も整えず簡単に切りそろえ、眼鏡をしているその風体と柔和な面持ちは、何処にでもいるようなサラリーマンを思わせる。


『STRIKE!!』の最初へ 『STRIKE!!』 82 『STRIKE!!』 84 『STRIKE!!』の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前