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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『STRIKE!!』(全9話)-251

 キィィン!

 芯を食った強烈な打球が、右中間へと放たれた。
 グン、と加速をつけて伸びていく。それは外野手が瞬きをする暇もなく、その間を切り裂くように通り抜け、フェンスに激突してグラウンドに転がっていた。
「!」
 深い位置で守っていたにも関わらず、あまりの打球の鋭さに反応さえできなかった中堅手の二ノ宮。しかし彼はすぐに我を取り戻すと、外野を転々としているボールを追いかけ、それを捕まえて、内野の方を見やる。
 一塁走者の晶は、既に二塁ベースを駆け抜けており、ホームまで突入する勢いであった。
「させるか!」
 二ノ宮は乾坤一擲とばかり、本塁へ向かって送球する。中継に入っていた遊撃手の鈴木は目に入らなかった。
(チャンスなんだから!)
 晶は亮のバットから快音が響いた瞬間、駆け出していた。打球の飛んだ方向や、捕られてアウトになるかもしれないという考えは、頭の中から放り出している。亮の打球は、そういうことを失念させるほど、凄まじいものだったのだ。
 二塁を駆け巡った時、審判が何もコールをしないことで晶は、亮の打球がヒットになったことを改めて察した。同時に、中継に廻ろうとしている遊撃手の鈴木が、捕球体勢に入っていないことを見て、それが外野の間を抜けた長打であると読んだ。
 もしも三塁に留まれば、二・三塁となり一塁ベースは空く。そうなれば、間違いなく5番のエレナは勝負を避けられるだろう。
 下位打線を信じていないわけではない。だが、終盤も終盤に入った試合の中で、得点の好機になるものは貪欲に奪っていかないと、流れはするりと逃げてしまう。
 晶は三塁を蹴った。二ノ宮からの返球が、中継に廻っていた鈴木の頭を越えるような軌跡を描いて、それでもコントロール良く津幡に向かって一閃する。
 亮の中では、空気の流れが止まったままだ。晶の脚を駆けるその様と、ボールがバウンドしながら確実に津幡の構えるミットへ向かう様子が、スローモーションのように映し出されている。
 晶が頭から跳んだ。投手であるのに、その大事な両腕を危険に晒してまで晶はホームに執着していた。先のことなど、考えてはいなかった。考えていたのは、とにかく1点を奪い取ることだけ……。
 津幡のミットが軽い音を鳴らし、流れるように晶へのタッチを敢行した。
「―――」
 乾いた土埃が舞って、そしてそれが収まりを見せたとき……
「セーフ!!」
 審判の両腕は水平に――綺麗なほど、水平になっていた。

 ワアアァァァァァァ―――!!!

 球場が歓声に沸いた。城二大のベンチも、その歓声の中にあった。
 4番・亮のタイムリー・ツーベース。この回2点目となる得点は、3−2と城南第二大学が櫻陽大学を逆転する1点となった。
(よし……)
 二塁ベース上で、力強く拳を握り締める亮。彼にしては珍しく、興奮を顕にしている。終盤に来て、リードを奪い取る一打を放ったことに。
 優勝に向かって、甲子園に向かって…、
 城二大は大きく一歩を踏み出したのだ。





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