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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『STRIKE!!』(全9話)-246

「がんばれ! お兄ちゃん!」
 桜子も吼えている。
「龍介さん、龍介さんッ!」
 それ以上に由梨が、フェンスから心太(ところてん)になってこぼれてしまいそうなほど、そこに体を押し付けて声を張り上げていた。
 なにしろ、8回表の城二大の攻撃で最初の打席に立ったのは赤木なのだ。桜子は彼のことを“お兄ちゃん”と呼び慕っているし、由梨は赤木にその肌を許し、枕を共にして眠った仲だ。その応援に、殊更熱が帯びるのは自明のことである。
「赤木! いけよ!」
「いけや赤木! お前の真の力を、見せたれぇ!!」
「うっしゃあ!!」
 好漢・赤木の大一番だ。城二大のベンチも、外野に負けじと燃えに燃えている。
「……間違いをしなければ、問題のある打者ではないよ」
 そんな相手ベンチに目もくれず、冷静に津幡が京子と耳打ちをしていた。千里ファイルに寄れば、今大会における赤木の打撃成績は、代打で何度か出場はあるがいずれも凡打に終わっている。
「勢いに飲まれちゃいけない。……まあ、心配はないか」
「はい」
 京子とて駆け野球の中で、何度となく勝敗の帰趨を味わってきた。自分のペースを崩さない術は心得ている。
 津幡がポジションに戻った。京子はサインを確認する前に、一塁手の管弦楽の方を向く。管弦楽は、大きな頷きでそれに応えてくれた。
(さすがに、痺れてきた……)
 中盤からフォークを増やしていた。加えて、駆け野球の時や先の享和大学との試合と違い、キリキリした緊張感の中での投球が、京子のスタミナをいつも以上に消費させている。それは、指の力も同様だ。フォークの形に指をはさみこんだとき、わずかながら指の筋肉に張りを覚えた。
 津幡のミットが、低めに構えられる。この好捕手は、今まで一度もワンバウンドのフォークを後ろに逸らしたことはない。だからこそ、京子は思い切りフォークを投げ込むことができるのだ。
 大きく振りかぶり、脚を高く上げた。相手の打者は、かなり気負っているらしく、傍目にも余分な力が入っている。
(………)
 その構えに、わずかなりと京子の気持ちが緩みを見せた。それは、無意識のことだった。
「!?」
 しかしその緩みは、確実に指先に伝わった。
 ずるり、と明らかにリリースを失敗した感触を残して、ボールが離れていく。
(しまっ――)
 失投――と、思う間もなく、打者の赤木がスイングを始めていた。

 キィン!

「えっ……」
 大振りといってよいスイングに浚われた軟式ボールが、天高く空を舞う。
「あ、当たった、当たりよった!」
 赤木は打球を目で追いかけようともせずに、どすどすどすと一塁目掛けて駆け出していた。
「………」
 城二大のベンチから、皆は身を乗り出していた。誰もが、その打球の行き先に目を光らせている。それは、櫻陽大の野手も同様であり、球場に脚を運んでいる壬生や智子、桜子に由梨も同じであった。
 そんな視線を一身に浴びて、打球はまだ上空を翔けている。翼が生えているかのように、何処までも、何処までも……。
「う、うわぁ!」
 赤木がベースに脚を取られ、転んだ。その瞬間だった。

 ウワアァァァァァァ!!!

「な、なんや!?」
 轟のように揺れる球場。疎らにいた観客が総立ちになり、拍手を鳴らしている。
「す、すごい! お兄ちゃん、すごい!!」
「りゅ、龍介さん……」
 桜子は絶叫し、由梨は絶句していた。
「あ、赤木ィィ!」
「うおぉぉぉ!!」
 原田と新村が、手を取り合って飛び跳ねている。その横で、上島がしきりに腕を振り、長谷川が打球の落ちた場所を指で示していた。


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