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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『STRIKE!!』(全9話)-238

 キン!

「っ!」
 鋭い打球が、新村の右横を駆け抜ける。必死にその打球を捕まえようとした新村だったが、グラブの頂点をかすめはしたものの、及ばなかった。
「よしっ!」
 三塁走者の京子が、ホームベースを強く踏む。これで、一点。
「バックホーム!」
 津幡もまた、三塁を勢いよく廻り二点目を狙って猪突してくる。右翼手の上島から投じられた返球を受け止めてから、ヘッドスライディングをしかけてきた津幡目掛けて、亮はミットを繰り出した。
「セーフ!」
 微妙なタイミングではあったが、審判はためらいも無く両手を水平に広げていた。櫻陽大はこれで、2点目を獲得したことになる。
 3番・二ノ宮の二点タイムリーヒット。ベンチが大きく沸いた。
「………」
 やられた、と亮は思う。配球の組み立てを考える間もなく、速い勝負の仕掛けにはまってしまった。どうも、この回は余裕を失ってしまった自分がいる。
「先に、取られちゃったね」
「晶」
 しかし、自軍のエースは落ち着いたものだ。2点を先制されたばかりか、次に迎えるのは晶にとっては天敵といってよい4番・管弦楽だというのに。
「亮には考えがあったんだと思うけど、もう出し惜しみなんてしていられないよ」
「………」
「いこう? レベル0で」
「そう、だな」
 晶に促されて、亮は覚悟を決めた。
「ははーはははははは!!」
 人を喰ったような哄笑が響く。言わずと知れた管弦楽である。その声を聞きながら、自分のポジションに戻った亮。
(まずは、これを見せておく)
 内角高めに、レベル2のストレートを要求した。晶は頷くと、塁上に残っている二人のランナーをそれぞれ目で牽制してから、投球モーションを開始した。

 ズバン!

「ストライク!」
「ほほう?」
 レベル2は、晶の中では最も球速と球威のあるボールだ。言うなれば、彼女のウイニングショットだ。それを初球に持ってきたことに、いささか管弦楽は怪訝なものを感じた。
(投げる球が、無くなってきたか近藤晶!)
 球種が限りなく少ない(現時点では、ストレートしかない)相手だから、球の勢いに惑わされずに落ち着けば、その攻略も容易いものだ。管弦楽は、次のストレートに照準を絞り、全身のバネを引き絞って晶と対峙する。
(いくぞ、晶)
 打ち気を見せている管弦楽の構えを見やりながら、亮はサインを出した。
 晶には三種類のストレートがあり、これまでもそれぞれ“レベル1”“レベル1.5”“レベル2”と呼び表してきた。ただのストレートに、種類があるのだろうかと思われる人のために、少し説明しておこう。
 レベル1とレベル1.5のストレートの違いは、軟式ボールの擬似縫い目にかかる指の位置の違いである。硬式ボールを模したデザインの軟式ボールにあるその縫い目に対し、レベル1の場合は垂直に、レベル1.5の場合は平行に指をかける。そうすることによって、回転数が変わってくるのである。垂直に指をかければ、縫い目1本分の摩擦が起こす回転を生み、平行に指をかければ縫い目2本分の摩擦が起きる。そうすることによって生じる回転数の差を生かし、晶は野球の基本である緩急をつけてきた。


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