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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『STRIKE!!』(全9話)-2

「ゼミは………同じだったのか!?」
 もう少し詳しく見て、わかった。
 米倉ゼミ。文学部に籍のある亮が所属する必修科目のゼミナールだ。
 いかに、亮が、大学の授業を聞き流しているか良くわかる。大学に来て、半年以上も同じゼミを受けていたのに、その存在に気づかなかった。大教室で、しかも多人数で行われる科目だけに、それも仕方ないこととは言えるのだが。
(あの、近藤が)
 彼女の投球フォームが鮮烈によみがえる。しなるように唸る左腕から繰り出される、威力のある速球……。直接対決することはできなかったが、ビデオからでも身震いするほどに自分を魅了したその球を、亮は忘れてはいない。
 そして、あの長い髪。聖地のマウンドになびいた、艶やかな黒髪。その記憶も、亮には焼きついていた。甲子園でヒットを打ったことや、エラーをしたことなど、他の何よりも強く思い出に残っている出来事。
「………あ、と……」
 亮は、我に帰った。現実が、彼を冷静にさせる。
「これで、松平さんの穴が埋まるかもしれない」
 退部してしまったチームの大黒柱の代わりを、探している最中だったのだ。
 彼の所属する軟式野球部は、軟式とはいっても本格的なリーグ戦に参加している。“隼リーグ”と称するその大会は、東日本を中心に12の大学が参加しており、それを成績順で1部・2部に分けて戦っているのだ。大会は、前期・後期の季節分けがされており、総合順位で最下位になると、2部チームとの入れ替え戦に臨まなければならない。これに敗れれば、2部への降格とあいなってしまう。
 亮のいる私立城南第二大学・通称「城二大」の軟式野球部は、1部リーグに所属している。ところが、今季の成績は、最下位…。例に漏れず、二週間後に入れ替え戦を控えている身分だった。
 相手は、2部リーグとはいえ全勝したチーム。実は、春先の練習試合でも完敗している。
 リーグ関係者は、そのほとんどが、城二大の敗北を予想していた。
 それに輪をかけるようにして、エースで四番だった松平が、後期日程の終了と共に、誰にも何も告げずに退部。大学からも消えてしまった。
 まさに、チーム状況は最悪。普段は前向きな監督でさえ、匙を投げそうになっている。
 とにかく、そんな中でも亮は諦めず、まずは部員の補充を考えていた。なにしろ、エースが退部して以来、部員は減り続け、現時点では8人しか残っていないのだ。これでは戦うことすら出来ない。
 名簿の中で、知っている名前があれば声をかけるつもりでいた。高校野球雑誌を色々と通読していた彼だ。ひょっとしたら、一人でも経験者の名を見つけられるのではないだろうかと考えて。
 そして…見つけたのだ。それも、近藤晶の名前を。
「いけるかもしれない」
 俄かに、希望の光が見えてきた。少なくとも、今の亮はそう思った。



「いいよ」
 話を持ちかけたとき亮は、いくつもの説得パターンを用意していたが、近藤晶からの回答は、実にあっさりとしていた。
 ええぇっ、とか言って騒ぎ立てるのは、晶の隣にいる同じゼミの男。たしか、長見君とか言ったような。…よく覚えていない。
「ほ、ほんとに!?」
 亮は安堵した。正直、これほど簡単に引き受けてもらえるとは思わなかったが…。
「報酬は?」
「はい?」
 しかし、亮の中で浮かんでいた今後のプロセスは、晶が差し出す手のひらによって壊された。


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