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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『STRIKE!!』(全9話)-198

「はぁ……はぁ……」
「くそっ、離せっ! 高杉!!」
「なに!?」
 男が、自分の名を呼んだ。一瞬緩みかけた力はしかし、暴れ出した男に気づいてすぐに押さえ込む。
「貴様、誰だ!」
 直樹はその顔を覗き込もうと、頭を振って抗う男の動きを追う。そんなことを繰り返す内に男の帽子が飛び、その顔を薄闇の中ではっきりと晒した。
「ま―――」
 絶句した。知っている顔だったからだ。
「く、くそっ」
「おまえ! そこまで堕ちていたのか!!」
 激情が生まれた。直樹は、胸の憎悪が激しく燃え盛るのを抑えきれない。
「松平!」
「う、うるせえ!!」
 名前を呼ばれ、狂ったように暴れる男。しかし直樹は、憤怒を力に変えて男を押さえ込む。それこそ、圧殺してしまいそうなほどに…。
「ぐ、ぐわ……い、いてぇ……」
「おまえ……ゆるさねえ……絶対に、ゆるさねえ……」
「いてぇ! いてぇ!」
 ぎりぎりと手首を捻る。まるでそのまま折ってしまいそうなほどに、強く。
「一度ならず二度までも……おまえ……殺してやる……」
「やめてくれ! 高杉、頼む! やめてくれぇ!!」
 みしみしと唸る手首。おそらくそれを折った後、今度は首の骨を折るに違いない。そんな勢いを感じさせる直樹の凄みに、松平は涙を流して懇願した。
「松平……死ね……」
「やめ……やめて…」
「直樹君!!」
 は、と直樹の耳がその声を聞きつけて、ようやく我に帰った。力が一気に緩んでしまうが、激痛に耐えかねたものか松平は抵抗をしない。
「大丈夫か、君!」
 制服を来た警官が、直樹と入れ替わるようにすぐに男を後ろ手に極めると、手錠をかけて完全に動きを封じた。幸いにも、巡回をしていた警官をすぐに玲子は見つけたらしい。
 直樹はそれを確認すると、ごろりと男の背中から転がって、草の大地に横たわった。
「!! 直樹君、それ………!!」
 玲子が息を飲んだ。その青ざめた表情に、今一度自分の身体を見回してみる。
 なにかが、太股から溢れて地面に零れていた。なにか、液体のようなものが。
「え……」
 触ってみる。じわじわと溢れ出すそれは、べっとりとした手触りと共に、薄暗闇の中でもはっきりわかるほどの色合いをしていた。
 真っ赤な、血の色を―――。
「!?」
 右太股を真っ直ぐに切り裂いて、そこから出血している。
「き、きみ!」
 傍らに男を抱えながら寄ってきた警官が、直樹の姿を見て絶句した。直樹の太股から溢れるものは、地面にゆっくりと地図を広げているのだ。
「あ、あ……」
 直樹は痛みを感じていない。ただ、経験のない出血に、頭は真っ白になっていた。







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