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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『STRIKE!!』(全9話)-185

「あ、あふっ……まだ、でてるよ……あったかい……すごく、あったかいよ……」
 びゅっ、びゅっ、と、亮の砲身から放たれている白い波動。その波動に貫かれ、晶は湧き上がる愛しさに心を満たされ、ひと筋の滴となって頬を伝った。
「あ、きら……」
 放出の余韻を残しながら、亮が覆い被さってくる。その重みでさえも、晶にとってはいとおしい。
「亮……好き……」
 その愛しさが唇からも、溢れ出した。その逞しい体を両腕に抱きしめて、胸板に自分の膨らみを押し付ける。暖かさが触れているところから伝わって、晶は幸せを感じる。
「……てる」
「?」
 亮が何かをささやいてくる。まだ余韻から抜け切らない彼の言葉を、晶は聞き逃していた。
「愛し、てる……あきら……」
「……っ」
 それは、想いの最上級。亮の口から零れた愛の囁きに、感極まった晶はもう一度、その瞼を濡らした。
「あたしも……愛してるよ……亮……」
 そして強く…繋がったところの熱さを感じながら強く、亮の身体を抱きしめたのだった。



「う、うわっ!?」
 城南第二大学のグラウンド。ほとんど軟式野球部の練習場と化したそのグラウンドで、軟式野球部の面々は迫る決戦の日に備え、懸命に汗を流していた。
 ケガも怖いところだ。だからこそ念入りなアップを繰り返し、ようやくシート打撃に移っていた。
 現在の打順に併せて行われる練習であるため、最初に打席に入った長見。見違えるほどの向上した彼の打撃力は、コンパクトなスイングからミートを繰り返し、シャープな打撃を飛ばしていた。
 しかし、ある球を投じられた瞬間、彼は不恰好なほどにバランスを崩して空振りをした。
「?」
 守備位置に散っているメンバーが怪訝な表情をしている。長見が無様に空振りをしたボールは、チームのエース・近藤晶が投じたものとしてはあまりにも勢いが感じられなかったからだ。“なんであんな球を、空振りしちまうんだ”と…。
「よーし、いい感じだ晶!」
 しかし亮は、その勢いのないボールに対して、満足そうな顔つきである。ボールを投げ返された晶も、嬉しそうである。
「やってくれるじゃねえの」
 長見が苦笑いを浮かべながら、“一杯食わされた”といいたげな表情を亮に見せた。
「いくよ、栄輔!」
「………」
 晶がプレートを踏み、セットポジションから投球を始める。シート打撃の時には、彼女は常にセットポジションでの投球を心がけていた。
 それでも柔らかく大きなモーションから腕が振られ、亮の構えるミットに向けて威力のある直球を繰り出す。それは糸を引くような軌跡を残し、外角低めの絶妙なところに噛み付いた。
「うっ」
 長見の手が出ない。亮は笑顔で、“ストライク”であることを告げる。
「?」
 そして、やはり怪訝な表情を貼り付けているナインたち。どうにも、違和感が拭えない。
「こいつは、厄介だぜ……」
 頬を引きつらせながら、ようやく慣れてきたはずの晶のストレートに、それ以降はまともな当たりもでないまま、長見の打撃練習は終わった。
 続く斉木も、レベル1を多投していた最初の方は鋭い当たりを何本か放ったが、長見が不恰好に空振りをした勢いの緩い球に、彼もまたタイミングを外した。


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