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蜘蛛〜Spider〜
【推理 推理小説】

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蜘蛛〜Spider〜
蜘蛛の巣(後編)
-1

「おはよーす」

事件が起きた翌日、仕事場へと来た雲形は、いつものように挨拶をした。

普通ならば、雲形のこの刑事とは思えない返事に、上司が怒るのであろうが、慣れてしまったためか怒る者は、誰一人いなかった。

つい最近に、この署にやってきた松下も、前に現場で会っているため特に疑問をもっていなかった。

「雲形!ちょっといいか」

署に来て早々、原田に呼ばれた雲形は、面倒くさそうな顔をしながら原田の元へと向かっていった。

「なんすか?俺、つかれてるんすけど」

「昨日、休みだったろ?女にふられてずっと泣いてたなら別だが……」

原田の言葉に雲形はイラっとしたが、余裕の笑みを浮かべながら言葉を返した。

「ふられてないっすから。超いい彼女っすから。謝ったら許してくれたっすもん。それに、疲れてるのは原田さんがあんな簡単な事件に俺を休みにも関わらず呼んだからっすから」

皮肉を逆に返された原田は言い返す事もできず話題を切り替えた。

「ところでだな、昨日あの後すんなりと犯人は捕まったよ」

「そうっすか」

原田の言葉に雲形は、全く興味なく答えた。

「たまには犯人に興味を持て。まだ犯人に詳しい話聞いてないから、お前が聞いてこい」

「なんで、俺なんすか」

「今日、夕飯なしな」

 原田にそういわれると、雲形は無言で犯人のいる取り調べ室へと向かっていった。


雲形と原田の会話に疑問を抱いた松下は、原田に質問をぶつけた。

「なんで雲形さんは、夕飯抜きでいったんですか?」

「言ってなかったか?俺と雲形は一緒に住んでるんだ。」

原田の言葉に変な事を一瞬考えた松下であったが、雲形に彼女がいることを思いだし、口に出す前にそれを胸の奥へしまった。

「なるほど。雲形さんに負けてばかりかと思ったら違ったんですね。それにしても、雲形さんの推理力はすごいですね」

 松下の言葉に禁煙パイプをくわえて、原田は答えた。

「負けてばかりはよけいだ。あいつの推理力は、爺さん譲りだからな。一般人を遙かに上回るさ」

「爺さん?」

 松下は再び疑問を抱くと原田は、くわえていた禁煙パイプを口から離し答える。

「最高の殺人っていわれた事件を知ってるか?」

原田の言葉にでた最高の殺人と言う言葉に、警察では知らないものはいないのではないかという事件を思い出していた。

今から20年くらい前だろうか警察だけでなく世間を驚かせる事件が起きた。何に驚いたかと言うと全く証拠がない事件が10件以上も起きたのである。そして、常に現場には同一犯と言える紙が残されていた。その紙には“最高の殺人者”と書かれていた。まさに完全犯罪ともいえる事件であった。

長い間、その事件を思い出していた松下は我に返り、原田の言葉に返答した。


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