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紅館の花達
【ファンタジー 官能小説】

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紅館の花達〜転生花〜-3

…20分後。
『…どこでしょう? ここは…?』
甘かった。 敷地は予想以上に広かったのだ。そして森まで有ったのだ。
現在、私は森の中。
完全に迷子になってしまったのだ。
『…歩いていれば…いずれ。』
パキリパキリと、地面に落ちている小枝が音を立てる。
…静かだ…
『大都市の中なのに…こんな静かな場所があるなんて…』
ふと、視界が開けた。
日の光りが溢れる森の広場。
『暖かい…綺麗な場所…』
だが、進むと次第にそこが明らかになってきた。
広場は墓場だった。無数の墓標が数多く立ち、妙な静寂が流れている。
『お墓…誰のかしら?』
そっと近付いて、墓標に刻まれた文字を読む。
【ベットの管理人 アイーダ 享年43】
隣の墓標には。
【名コック フィナ 享年68】
『これ…皆、紅館のメイドさんや奴隷さんのお墓なんだわ…』
そして、墓には皆一輪の花が添えられていた。
大輪の花、白い花、赤い花。それは種類がそれぞれ違い、まるで…
『…その人を花で表しているのね…』
そんな中、他の墓とは違う墓が一つだけあった。
花が添えられていないのだ。
『まぁ…なんでこのお墓だけ無いのかしら…』
紅様はこの人が嫌いなのかしら?でも、それならお墓なんて造らないだろうし…
首を傾げながら文字を読む。
【我が最愛の人ここより旅立つ。 シャルナ】
読んだ瞬間、心拍数が徐々に上昇し始めた。
さ、最愛の人…これは紅様の…
シャルナ…私の名前に似てる…?
『でも、変な文章…【ここより旅立つ】だなんて…
それに、享年が彫られて無いわ。』
う〜ん、と声を出しながら考え込む。
…ガシッ!
『…!』
誰かに急に肩を掴まれた。
『彼女は死んでいない…肉体は滅んだけどね。
それより、いけないエルフさんだね、シャナ。
ここは皆が眠っている場所だよ?』
紅様だった。肩を掴んでいた手がそのまま前に回り、後ろから私を抱き締める。
『あ…ごめんなさい、私…迷ってしまって…』
心拍数が最大に上がる…紅様は私の肩に顔を乗せて、お墓を見ているようだった。
『…紅様…このお墓…』
『シャナ、戻るよ。』
私の質問を打ち消すように紅が早口でそう告げた。
『あ…はい…』
紅様は有無を言わせないような口調だったため、私はそのまま従うより他が無い。
私は紅様の後を付いて、紅館へと戻っていった。
『白竜館はここ。
火竜館の裏側だよ。 来る時は火竜館の中を通って渡り廊下を渡ると良い。』
森から帰る途中、紅様は終始無口だった。
『あ、あの紅様…』
『ん、何?』
私に白竜館の場所を教えるとすぐに歩き出した紅様を呼びとめる。
『あの…知らなかったとはいえ、あの場所に行ってしまってすみませんでした。』
ペコリと頭を下げた。
『…良いよ。別に。』
…なんだか、紅様が変な気がする…
もうちょっと反応があるかと思っていたのに。
『…私、行きますね。』
少し早足で歩き出す。
なんでだろ?なんだか悲しい…
今まで、紅様が自分のものだったような気がしてた。
アルネさんを除いて、いっぱい居るメイドさんや奴隷の中で、抱いたのは私だけ。そう聞いて、なんだか嬉しかったのだ。
でも、実際は抱いてくれだけ。最愛の人、それは私では無い…

『…シャナさん。』
『は、はい!?』
考え込みながら歩いていたら、いつの間にか目的地に着いたようだ。そして、そこにはアルネが居た。
『ボーとしてないで、ちゃんと歩いてよ。
…仕事は床掃除よ。 一階の廊下全部をよろしく。』無表情とも言える冷静な口調で作業を説明するアルネ。だが、気のせいだろうか?アルネが怖い…
『他にも、もう一人居るから協力してね。』
説明を終えると、箒を私に渡し、アルネは執務室の看板がある部屋に入って行ってしまった。


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