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■LOVE PHANTOM ■
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***君の青 A***-1

冬の色が濃厚になるにつれ、太陽の光は小さく、ぼんやりとしか見えなくなった。夜ともなれば当然のように冷え込み、暖房なしでは耐えられない毎日が続いている。今日は太陽が出ていないものの、例年よりもずっと暖かく、落ち着いた一日が過ごせるらしい。さっき、目の前のテレビがそう言っていた。
 僕はトーストをかじりながら、手元にあるマグカップへミルクをなみなみ注いだ。
 たいがいの朝は、いつもこれて済ませてしまう。
 おふくろがいれば、これにおひたしやらなんやらとつくのだが、つくだけでほとんど箸はつけない。あまり腹に入れると、その日一日どうも調子がすぐれないだ。
 手元に残った少し大きめのパンを、いつもどおり無理やり口へ詰め込み、それを冷たいミルクで一気に流し込む。これはもう、朝の儀式と言ってもいい。
 そして僕が汚れた食器をキッチンへ持っていこうと、立ち上がった時だった。
廊下から、ぺたり、ぺたりと、裸足の足跡が近づいてくるのが分かった。
 彼女だ。と、ゆっくりと開いたドアの隙間から、まるで幽霊のように、ふわふわと雫のやつが居間へ入ってきた。
 髪はぐしゃぐしゃ、目は半分も開かず眉間にしわを寄せている。顔も少しむくんでいるだろうか。  
「お・は・よ・う」
 皮肉たっぷりな口調で言ってやっても、雫はそれも聞こえないという様子で、さっきまで僕の座っていた椅子へ、すとんと腰を落とした。どうやら、頭の中はまだ眠っているらしい。それもそうだろう。昨夜の彼女は、はっきり言って公害だった。夜がふけても懐かしさという興奮がなかなか治まらず、どこかから思い出のついたものを見つけてきては、喜々としてそれと戯れていたのだ。その騒々しさのせいで、実のところ僕も寝不足気味になっている。
 「何か食べるか?」
 そう言いながら、僕は冷蔵庫を開けた。
 中は結構寂しいが、まぁ、一人分の食事なら余裕で準備できる。雫はテーブルに額をつけると、振り絞ったような声で、
 「紅茶、アールグレイ」
 と言った。
 まったく、こいつはいつまで寝ぼけているつもりなんだ。
 「それは切らしているって、昨日言っただろ」
 あきれながら僕が言うと、彼女は頭を横たえたままの体勢で、ゆっくりこっちを向いた。
 「じゃ・・・ジャスミンね」
 「はいはい」
 僕は家と店をつないでいる扉を開け、仕事用に置いてある靴を履いた。紅茶なら、店で煎れた方がいいだろう。
 「紅茶だけでいいのか?トーストとかは?」
 聞いてはみたものの、雫からの返事はなく、代わりに規則正しい寝息だけが返ってきた。
 振り向くと、いつの間にか彼女はテーブルの上に突っ伏したまま眠っている。
無言で向き直る。
 「まったく。今夜は早く寝ろよな」
 雫を我が家へ滞在させるあたり、僕はいくつかの条件を彼女に提起した。一つは店を手伝うこと、もう一つは青い鳥を探しにいくのは仕事以外の時間、つまり営業中以外の時間にすること。そして最後に、夕食は雫が作ること、だ。食料と寝床を提供してやるのだから、僕にだってこれくらいの得はあってもいいだろう。
もちろん、彼女は快く了解してくれた。
 けれど、今になって後悔している事が一つある。何故あの時、何故長湯はするなという条件を出さなかったのだろう・・・・と。気づいた時にはもう遅かった。
 雫はもう、長湯なんてもんじゃなかった。
 昨日の晩のことだ。雫が、
 「私、先にお風呂頂いていい?」
 と訊くので、僕も見たいドラマがあったし、
 「いいよ」
 と言って、彼女に一番風呂を譲った。
 僕見ていたドラマは一時間半のスペシャル版だったので、見終るのも当然一時間半後となるわけだ。 いくら長湯でもそれだけの時間があれば、普通は「ああ、いいお湯だった」とか言って、何か冷たい飲み物でも飲んでいてもいいはずなのに・・・彼女は違った。僕がテレビを見終わっても、雫の姿はどこにもなく、何かあったかと心配になって風呂場へ駆けつけると、なんと中から少し音の外れた鼻歌が聞こえてくるではないか。あれは、さすがの僕も驚いた。


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